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2021年10月27日 12:00

【コラム】関係人口とは?(1)

全体公開

日本では、東京一極集中の是正が課題となっています。

東京一極集中が進むことにより、企業は物流や管理コストを圧縮できるようになります。また、本社機能が東京に集まることで企業としてのブランドが確立され、東京以外の地域から、優秀な人材、優れた商材を集めやすくなるでしょう。


しかし、東京一極集中がこのまま続けば、地方都市の人口減少は加速し、長期的に見れば日本経済に深刻なダメージを与える可能性があります。

2021年5月には、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大したことで、人口が集中する都市部は感染リスクが高いと認識され、1997年以降初めて東京都は転出超過を記録しました。

しかし、依然として首都圏への転入が多い状況は大きく変わっていません。

行政では、今まで観光による「交流人口」や、移住者・定住者を含む「定住人口」の増加を目指していました。

そして、現在はさらに「交流人口」と「定住人口」の間に存在する「関係人口」の創出に注力し、地域経済の活性化を目指しています。


本記事では、関係人口の定義、関係人口が地域や地方自治体にどのような影響を与えるのか、まとめて解説していきます。

前後編で紹介します。まずは前編からご覧ください。



<目次>

  1. 関係人口とは
  2. 関係人口における「関係」の考え方
  3. 定住人口と関係人口の違い
  4. 交流人口と関係人口の違い
  5. 関係人口の数
  6. 関係人口が創出・拡大される意義



1.関係人口とは


関係人口とは、仕事や観光などで地域を訪れる「交流人口」や、地域に居住・移住する「定住人口」とは異なり、地域と多様な関わりをもつ人々のことを指します。

関係人口の定義としては、二拠点居住をする人、地域にルーツや愛着がある人などが該当します。


a.関係人口における「関係」の考え方

関係人口という言葉の定義をより明確にするため、ここでは関係人口における「関係」の考え方について詳しく解説します。

関係人口における「関係」とは、地域との関係の深さよりもその地域への情熱や想い、愛着を表していると言えるでしょう。

観光は、あくまでもその地域にある景色や歴史的建造物を目的に訪れます。

しかし、関係人口と呼ばれる人々は、訪れる土地になにかしらの想いを寄せています。

それは、ときに小さい頃に訪れた懐かしき光景への慕情かもしれませんし、なんとなく居心地がよくて、ついまた来てしまう親しみかもしれません。

つまり、関係人口と呼ばれる人々はその地域に興味があり、かつ関与していきたいという想いをもつ、いうなればファンと言い換えることもできます。


b.定住人口と関係人口の違い

定住人口とは、その地域に居住する人やその土地へ移住する人たちのことを指します。

定住人口と同じ意味で「居住人口」と呼ばれることもあり、関係の深さで考えれば関係人口よりも深い関係だと言えるでしょう。

地域への移住は心理的ハードルが高く、多くの地方自治体が定住人口の創出に苦戦を強いられているのが現状です。

近年は、ワーケーションや多拠点居住の受け入れなどによって、地域へ移住するハードルを下げる取り組みが行われています。


c.交流人口と関係人口の違い

交流人口とは、なにかしらの目的を持ってその地域を訪れる人たちのことを指します。

具体的な目的としては、観光を筆頭に通勤・通学、習い事、スポーツ、レジャーなどが挙げられます。

交流人口はあくまで目的を果たすために訪れることが多く、関係人口と比べて地域との関わりは浅いと言えるでしょう。



2. 関係人口の数


国土交通省の調査によると、2021年3月時点で全国にいる18歳以上の居住者、約1億615万人のうち、20%弱の1800万人近くが関係人口であるとされています。

関係人口の内訳は、三大都市圏の居住者で861万人、その他地域居住者で966万人となっています。

また、関係人口の来訪が多い地域は、三大都市圏からの転入超過回数も多くなっています。

※参照:全国の「関係人口」は1,800万人超!~「地域との関わりについてのアンケート」調査結果の公表~


関係人口が増加している背景

近年、関係人口は増加傾向にあります。

関係人口が増加している背景としては、リモートワークが普及したことによる価値観の変容が大きな影響を与えていると言えるでしょう。ご存知のように、新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワークが急速に浸透しました。

リクルートワークス研究所が実施した調査では、2019年12月時点のテレワーク実施率は8.8%であったのに対し、1度目の緊急事態宣言下の2020年4〜5月では32.8%でした。

2021年1〜2月時点では25.4%とわずかに減少傾向が見られるものの、たった2年で17%も増加しています。

※参照:全国就業実態パネル調査2021


リモートワーク下ではオフィスへ出勤する必要もなくなり、勤務地は自宅に、時間のコントロールも従業員に委ねられます。

通勤が当たり前の時代では、職住近接によって通勤時間を短縮できる魅力がありましたが、出勤の必要がなくなれば高い家賃を払い続けて人が多く集まる都心部へ住む必要性も薄くなるでしょう。

また、人が密集するエリアでは新型コロナウイルスなどの感染症に感染するリスクも高くなります。

このような点から、人混みを避けようと週末だけ地方で暮らす二拠点居住やワーケーションのニーズが高まり、関係人口が増加しているものと見られます。



3.関係人口が創出・拡大される意義

関係人口の数が増えると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

まず地域にとっては、課題解決や地域経済の活性化につながります。

多くの地域では人口減少による労働力不足といった課題があります。

地場産業の担い手は高齢化し、後継者について頭を悩ませているケースも少なくありません。

帝国データバンクの調査では、2019年の社長の平均年齢は59.9歳と過去最高年齢となっています。規模別では、1億円未満の中小企業が平均61.1歳、構成比は70代が22.6%、80歳以上は5.4%も占めています。

※参照:全国社長年齢分析(2020年)


また、別の帝国データバンクの調査では、26万6000社の65.1%にあたる約17万社で後継者不在であることが明らかになっています。

※参照:全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)


関係人口が地域で地場産業の担い手・プレイヤーとなり、新たな風を吹かすことで、地域の労働力不足や地場産業の後継者不足などの課題を解決でき、かつ地域経済の活性化も推進できるでしょう。

一方、関係人口となる都市住民にとっては、自分らしいライフスタイルの確立や成長機会の獲得といったメリットを得られます。

平日に本業の仕事をする傍らで、休日の空いた時間に愛着のある地域や地域の人々と交流を深めて地域課題を解決する担い手として参加することで、新しいスキルや知見を得られるでしょう。

また、居住地と地域を行き来することで、二拠点生活や地方移住などライフスタイルの選択肢がより広がることもメリットだといえます。



実際の取り組み事例は、後編にてご説明いたします。

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