
2024年8月6日 7:05
衛星データを活用した農業DXソリューション:北海道未来技術レポート#2【ほっかいどうDX促進事業】
全体公開
北海道未来技術レポート #2 衛星データを活用した農業DXソリューション
みなさん、こんにちは。
ほっかいどうDX促進事業事務局の河井と申します。
今回は、北海道未来技術レポートの第2弾として、推進している地域課題および未来技術についての情報をお届けさせて頂きます。ぜひご覧頂き、関心をお寄せいただけると嬉しいです。
北海道は言わずと知れた日本一の農業地帯であり、数々の作物で生産量1位を記録しています。しかし、北海道の農業にも他の地域と同様に課題が存在します。
大局的な北海道農業の構図として、地形的に大きな広がりを持つ北海道は、気象や立地条件などの変化によって地域別に農業の特色があります。地域は大きく「道央地帯」「道東(畑作)地帯」「道東(酪農)地帯」「道南地帯」に分かれております。
そんな農産資源のあふれる魅力的な北海道ですが、農業従事者は年々減少しており、また年齢層もおよそ半数が60歳以上を上回る状況です。加えて5年以内の後継者の確保状況も多くの農業を営む方にとって課題となっています。
また直近の農業従事者の方の経営事情としても肥料原料の輸入価格は、2021年以降上昇傾向にある中で、ロシアによるウクライナ侵攻や為替相場影響等の要因も重なり、一時は過去最高に達するなど価格が大きく変動しています。こうした中、日本においては化学肥料使用量の低減に向けた取組を行う農業者に対する肥料費を支援する対策を講ずるとともに、肥料原料の備蓄や国内資源の肥料利用拡大等の安定供給に向けた対策を講ずるなど、国際情勢の変化に伴う影響への対応を図っていくことが求められています。
しかし、日本は化学肥料原料の大部分を輸入に依存しています。主要な肥料原料の資源が世界的に偏在している中で、リン酸アンモニウムや塩化カリウムはほぼ全量を、尿素は95%を、限られた相手国から輸入しています。輸出国側の輸出制限や国際価格の影響を受けやすいことから、輸入の安定化・多角化や輸入原料から国内資源への代替を進める必要があります。
北海道における農業の持続的な発展・継続は食料自給率の多くを占める安全保障の観点からも非常に重要な意味があります。そのためにはスマート農業推進や優良農地の確保と適切な利用の促進が必要です。道では、農地法などに基づき、優良農地を確保し、その有効利用を推進するとともに、市町村農業委員会、北海道農業会議等と連携しながら、農用地区域への編入促進・除外の抑制や、荒廃農地の発生防止及び解消・再生、担い手への農地の集積など計画的な土地利用を推進しています。
今回の未来技術は衛星データから得られる情報で、耕作放棄地がひと目でわかる農地パトロールアプリ「アクタバ」、生育・土壌状態を見える化し全ての圃場をラクラク管理するアプリ「Sagri」、作付け調査をもっとカンタンにするアプリ「デタバ」、農地所有者と作り手・担い手をつなげる農地マッチングサービス「二ナタバ」の4つの課題解決ソリューションを展開しています。
サービスを通じて「温室効果ガス削減量の可視化」などの取り組みから、創出したカーボンクレジットを販売ができるまでの一連のサポートも目指しています。
将来的には温室効果ガスの削減などから、カーボンファーミングなどの取り組みに繋げたい考えです。
「アクタバ」は耕作放棄地がひと目でわかる農地パトロールアプリです。
膨大な時間と労力がかかる農地パトロールですが、「アクタバ」なら耕作放棄地がひと目でわかるため目視確認の工数を大幅に削減できます。
パトロールの準備や調査後のデータ管理もアプリで完結することにより業務効率化に寄与します。
「デタバ」は作付け調査をもっとカンタンに。を目指したアプリです。
膨大な時間と労力がかかる作付け調査ですが、「デタバ」なら全ての圃場の作付け状況を一気に把握できるので、簡単に効率よく作付け調査を行うことができます。
衛星データで作付け調査を実現するモデルを開発し、高精度の作物分類判定が可能になりました。作物分類レベルで約8割以上の精度を実現しています。累積の衛星データ量が増えると、作付け推定モデルの精度は上昇していきます。
「Sagri」は衛星データを活用した、生育状況・土壌解析データを用いて圃場の状態を見える化する圃場管理アプリです。
特長は生育状況を地図上で一気に把握できます。登録した農地の生育状況を地図上で把握できるので、優先的に作業が必要な箇所が一目でわかります。また土壌解析データで場所ごとの土の状態がわかるので、適正施肥・可変施肥に活用でき、肥料コスト減に貢献します。さらに通常時間のかかる土壌解析も、Sagriなら農地を一度登録すれば、スマホ・PCからすぐにご利用いただけます。
「ニナタバ」は全国の農地所有者と作り手・担い手をつなげ、農地の利用を促進するサービスです。
地域の作り手・担い手は既に多くの農地を抱えていることが多く、一方で大規模農家は農地を探しています。
そんな今の地域にはいない、大規模に営む作り手・担い手に農地があることを知って頂き、地域の未来を次の世代に託すためのサービスです。
農地は広大であり、自治体による管理にも限界があります。サグリの衛星データxAIによる耕作放棄地を検出する技術や、作物の推定を行う技術を用いて効率的に課題がある地域を浮き彫りにし、ピンポイントに農地所有者の意向把握が可能です。
地域計画の「目標地図」としてご活用頂くことも可能です。
青森県大鰐町ではサグリの作付け調査効率化アプリ「デタバ」の全国初で導入が決定されました。作付け調査は、農地において紙台帳の通り作付けがされているかどうかを調査するものです。大鰐町では、紙台帳をもとに調査を行い、広範囲に及ぶ農地を1つずつ目視で確認しなければなりませんでした。そのため、場合によっては数回足を運ぶことになり、大きな負担のかかる作業でした。また、調査後も、紙の台帳からパソコンにデータを入力する必要があるため、さらに膨大な労力がかかります。作付け調査効率化アプリ「デタバ」は、衛星データとAIを活用して、作付けの推定結果を把握し、作付け判定結果をWeb上で記録できるため、作付け調査を楽にできるという期待から導入が決定されました。
青森県大鰐町よりコメントを頂きました!
デタバを利用することで、「現地確認しない農地」を選び出すという段取りを組めるようになりました。その結果、これまで現地確認にかかっていた確認日数を約60%(延べ日数換算で42日から18日に)削減でき、職員の時間外労働も月間平均17時間から2時間に短縮できるなど、大幅な業務効率化を図ることができました。
今後は、野菜類などAIで解析できる品目を増やしてもらえるよう機能向上を期待しています。
『「サグリ株式会社 アグリイノベーション事業部 事業責任者 小林様』
これまで、JAグループの「AgVenture Lab」が実施するスタートアップ支援に採択されて道内のJAを紹介していただくなど、いろいろなマッチングの機会を得て2020年から複数の地域で実証実験を行ってきました。
北海道で実証実験をする良さはたくさんあります。まずは国内でもトップクラスで農業に力を入れているので、自治体や生産者はもちろん、地域の理解が得やすいこと。農業に関する研究機関や大学が多いため、専門的な知見やサポートを得られることもメリットです。たとえば「こういう実験をやりたい」と相談すると、「ではこの方を紹介します」と、すぐに最適な研究者や協力者と会うことができます。非常に人の輪を広げやすい地域だと感じました。
また、農地が広域で、多様な作物が栽培されていることも大きな魅力です。一つの実証実験で複数の成果を出すことができ、いろいろなパターンを試すことができます。
さらには、実証実験の結果を社会実装するための農業産業としての受け皿が大きく、実証実験で生み出したシーズをより早く、かつ大きく農業現場に広げることができる地域です。
近年、衛星データの活用が急速に進み、私たちの技術に多くの期待が集まっていることを実感します。その期待にしっかり応えて農地の見える化で価値を上げ、さらなる価値を創造していきたいです。
営農時の環境負荷の低減効果や業務効率化、及び、当該技術普及による将来的なカーボンファーミングの推進と生産者への施肥コスト抑制効果等が期待できます
農業従事者の皆様へのカーボンクレジット創出による新たな収益源の確保と持続可能な農業経営に期待ができます。
ご関心・ご相談等については
下記コメント欄に記載頂くか、ほっかいどうDX促進事業事務局の河井までご連絡頂ければ幸いです。
hokkaido_dx_sokushin-ml@east.ntt.co.jp
ほっかいどうDX促進事業事務局 河井宛
【本メールは北海道庁総合政策部次世代社会戦略局から「ほっかいどうDX促進事業」の業務委託の一環として情報配信させて頂いております。今後随時様々な未来技術レポートの情報提供を予定しております。
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HOP(Hokkaido Open Platform)事務局
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