
2026年3月10日 13:15
2026年3月11日 1:35
共創マガジンvol.3 ~ごみを運ばず、燃やさず、資源化する 小型アップサイクルプラントを提案 株式会社JOYCLE~
全体公開
地域の課題や可能性に向き合い、企業や自治体、大学・研究機関が連携して新しい価値を生み出す——そんなオープンイノベーションの実例(共創事例)をシリーズでご紹介します!
ごみを運ばず、燃やさず、資源化する
小型アップサイクルプラントを提案
株式会社JOYCLE
家庭や事業所から出る可燃ごみを大規模な処理施設へ運んで焼却するのではなく、小型の処理装置で資源化する——。
株式会社JOYCLE(東京都港区)は、これまでにない分散型ごみ処理プラントを提案しているスタートアップです。
今年1月、石狩市の協力で行われた実証実験について、同社代表取締役社長CEOの小柳裕太郎さんにオンラインでインタビューしました。
ごみを運ばず、燃やさず、現地で処理して資源化
—今回の実証実験は、どのような経緯で決まったのですか。
私が札幌市出身ということもあって、北海道で実証をしたいというのは、起業した2023年から考えていました。まだコンセプトだけで試作機もないうちからSTARTUP HOKKAIDOの事務局と連絡をとり、オープンイノベーション領域のマネージャー新発田大地さんから、スタートアップを支援する石狩市の「地域イノベーション連携石狩モデル事業」を教えていただき、応募したのが始まりです。

▲オンライン取材の様子(掲載用に一部編集しています)。
上段左からJOYCLEの小柳裕太郎さん、早坂文花さん、STARTUP HOKKAIDOの新発田大地さん。下段はHOPメンバー。
—プレゼンの審査を経て採択されたのが令和6年度ですね。
石狩市は日本海に面して厚田、浜益まで南北約70キロと縦に長い市域です。北石狩衛生センターというごみ処理施設まで車で1時間半以上かかる場所もあります。
そこで2024年はまず分散型ごみ処理プラント「JOYCLE BOX」をどのように配置すべきかのシミュレーションを行いました。ごみ収集車にGPSセンサーを取り付け、ごみの量などのデータを集めて、連携する九州大学の都市研究センターで分析。運搬ルートの中間地点にJOYCLE BOXを12機設置すると、ごみ収集車2台が削減でき、ガソリン代のコストカットやCO2の排出量削減に大きく寄与できることが明らかになりました。導入した場合、初期費用は5~6年で回収でき、高いESG貢献効果につながることも分かりました。

▲JOYCLE BOXは12フィートのコンテナで運べるサイズ。電熱線による熱分解技術により廃棄物からバイオ炭やセラミック灰を生成します。(提供:STARTUP HOKKAIDO)
—その結果を踏まえて今年度は2回目の実証実験だったんですね。
JOYCLE BOXの試作機を石狩新港の倉庫に持ち込み、1月19〜22日の4日間、石狩市の給食センターの廃棄物処理を行いました。
倉庫内とはいえ夜には氷点下になる寒冷地での稼働も、生ごみを含んだ処理も初めてでしたが、1日約100kgのごみを処理。約10kgのバイオ炭に資源化できました。装置の中の循環水も凍結せず、雪道の運搬などにも問題なかったので、今後、降雪地域にも自信を持ってお勧めできます。
—説明会にはどのような方がいらしてましたか。
実証期間中、メディア向けと投資家向け、説明会を2日に分けて実施しました。投資を検討されている方や新規事業をお考えの産廃事業者など、さまざまな方が足を運んでくれました。倉庫は我々に投資してくださっている三友環境総合研究所さん(神奈川県)がグループ企業の工場を貸してくださいましたし、同じく株主である北海道電力さんにも協力いただきました。石狩市さんはじめ、パートナー企業の皆さんのサポートが非常にありがたかったです。

▲苫小牧など道内各地をはじめ、愛知、静岡、東京など全国から見学者が訪れた説明会(提供:STARTUP HOKKAIDO)
廃棄物を有価物にアップサイクル
—そもそも小柳さんがごみ処理問題を考えるようになったきっかけは?
ごみを何とかしたいというよりは、社会課題を抜本的に解決するようなインパクトのあるソリューションかつグローバルに展開できそうなテーマで、自分が飽きずに取り組めるようなビジネスはないかと考えていました。環境エネルギー分野を深掘りするうち、これからは分散型のエネルギー供給と同様に、ごみの分散型処理も必要になると感じました。というのも、ごみ処理の広域化で輸送の距離が長くなり、コストが増大しているうえに、人口減でドライバー不足が深刻化しているからです。ですから、大きな社会課題を解決するビジネスを目指したら、たまたまそれがごみ処理だったという感じです。
—いきなりJOYCLE BOXの開発に着手したのですか。
最初は、小型のごみ処理装置の経済性や温室効果ガスの削減効果をIoTセンサーを活用して数値化し、データとして可視化できればお役に立てるんじゃないかと、データ管理プラットフォーム「JOYCLE BOARD」をリリースしました。
ところが現場のニーズに合った使い勝手のいい小型のごみ処理装置がなかなかない。装置そのものを自分たちで作った方がいいんじゃないかと思うようになり、2025年3月にJOYCLE BOXの試作機を作りました。石狩市に持っていったのもその試作機です。テストするうちにいくつか課題が見えてきたので、今はそれらを改善した2号機の製造に入っていて、来年以降、量産し販売・レンタルしていく予定です。

—ごみを資源化するとはどういうことですか?
ごみを熱分解してバイオ炭やセラミック灰などに資源化します。有機のごみであれば肥料にも使えますし、コンクリートに混ぜてカーボンニュートラル建材なども今後検討できます。無機の資源については、テーブルなどの家具やタイルなどの建材、路盤材などにも活用可能です。
我々はなるべく地元のニーズに合ったかたちにアップサイクルするところまで、マネジメントしていきたいと考えています。

株式会社JOYCLEのミッションは「資源と喜び(JOY)が循環(CYCLE)する社会の創造」。創業2年で2億円以上の資金調達に成功し、大きな注目を集めています。(提供:STARTUP HOKKAIDO)
—同じような装置は他にないのでしょうか?
あるにはあるんですが、無臭や静音と謳っていても煙の匂いがしたり、大きな音がしたり、排水が多かったり…。削減効果などのデータが可視化されてない装置がほとんどです。
—JOYCLE BOXはどのような現場に導入すると有効ですか?
まずは病院です。感染性廃棄物の処理コストが高いので、導入すればコストカットのインパクトが大きいでしょう。
ごみ収集のドライバーがいないとか、焼却炉が老朽化して更新時期を迎えている自治体、あるいは焼却炉のない離島などにも向いています。人口減少が見込まれるなか、従来のような高額な大型焼却炉の新設は、本当に必要なのでしょうか。
JOYCLE BOXの処理方法や装置のサイズなどは、ニーズに応じてカスタマイズして開発できますし、すでに9機の内定をいただいているほか、装置のレンタル事業を一緒に立ち上げたいというパートナー企業も増えています。
デロリアンがごみを処理する未来?
—将来的なビジョンを教えてください。
JOYCLE BOXは可搬型なので、ごみ処理のスピードが速くなれば、工場で使ったあとに病院に持って行ったり、シェアして使えるようになります。将来的にはUberEatsのように、JOYCLE BOXを必要な場所にデリバリーしたいと考えていて、その仕組みも特許出願済みです。
装置に太陽光パネルやペロブスカイトをつけ、装置内の熱も発電に活用し、移動中に発電や蓄電ができれば、JOYCLE BOXを運ぶEVも再生可能エネルギーでまかなえます。そうすれば完全にオフグリッドで、まちの中を走り回るインフラになれる。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンみたいなJOYCLE BOXをイメージしています。

▲JOYCLEのCROのアリウナ・バトエルデンさん(写真左)と、代表取締役CEOの小柳裕太郎さん。バトエルデンさんはモンゴル出身のエンジニア。元群馬大学の研究員で、熱分解・炭化のプロです。(提供:STARTUP HOKKAIDO)
—海外への展開は?
ドバイの産廃事業者やタイの病院から問い合わせをいただいています。フィリピンのセブ島の産廃事業者も見学に来る予定です。
いま東京都から補助金事業も採択いただいて、インドネシアのマーケットリサーチも進めており、中東や東南アジアではある程度のニーズが見込めるはず。今後は装置の製造も東南アジアでのOEMを検討し、原価を下げていきたいです。
サーキュラーエコノミー(循環型経済)の構築を促進
—北海道のスタートアップ支援についてはどのように感じていますか?
私は札幌市出身で、いま東京に拠点を置いている身として愛を持って申し上げると、北海道のスタートアップ支援は正直まだまだ足りないと感じます。フィールドとしては恵まれていますし、使えるアセットもあって、応援する体制も整ってきてはいますが、北海道で最初の一歩を踏み出す機会がもう一つ作り切れてていないような気がします。その点、我々は株主である北海道電力さんや三友環境総合研究所さんや、STARTUP HOKKAIDOさんをはじめとして、北海道で活躍されている素晴らしい皆様と、大変有難いご縁を持たせて頂いていますので、皆様のお力もお借りしつつ率先して北海道での先進事例を創っていきたいと思っています。
—JOYCLEの最初の一歩は愛知県だったそうですね。
私が名古屋商科大学のMBAのコースを受講していた時期にご縁ができ、たまたま2022年に愛知県のビジネスプランコンテストで優勝したことが、起業につながりました。
—自治体や大学、大手企業などと共創するオープンイノベーションの意義や価値についてはどのようにお考えですか。
大手の企業は新しいアイデアが出てきたときに、情報をなるべく外に出さず、自社で全てを開発しようとしがちです。それも一つの戦略ですが、スタートアップはリソースが限られているので、オープンイノベーションは当たり前。外にどんどん出て、いろんな方を巻き込んでいかなければ、前に進みません。
JOYCLEは会社自体がもうオープンイノベーションなんですよね。当社のメンバーはいま20名ほどですが、9割近くが起業経験者で副業や業務委託のスタイル。「副業から始めるスタートアップ」として新しい働き方も発信していきたいと思っています。

▲小柳裕太郎さん。小樽商科大学卒業後、総合商社で海外駐在を経験。人材系ベンチャー、電通、エネルギー業界のスタートアップでの勤務を経て2023年3月に起業。2025年10月には「週刊東洋経済」の「すごいベンチャー100」に選出されました。(提供:JOYCLE株式会社)
(本共創事例のメンバー)
■株式会社JOYCLE
■石狩市
https://www.city.ishikari.hokkaido.jp/
(お問い合わせ)
■STARTUP HOKKAIDO 実行委員会
HOP(Hokkaido Open Platform)事務局【所属:NTT東日本-北海道】
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