
2023年5月19日 12:00
2023年5月19日 6:43
昆虫食?マジ? <前編> - なぜ今、昆虫食なのか? -
コミュニティ限定
みなさんこんにちは、事務局の松山です。
最近はぐんぐん暖かくなり、もう初夏を感じる季節ですね。
さて今回は素人の私が、昆虫食の世界について調べてみました。
みなさんも「いや虫を食べるのはまだ抵抗があるなあ」という感じかと思います。私もです。
ただ昆虫食市場は、2025年には1,000億円規模に拡大すると言われており、基礎知識だけでも知っておくことは大事かなと思いますので、
今回はマガジンとして、みなさんにも見てもらえるようにまとめてみました。
というわけで
前編:「なぜ今、昆虫食なのか?」
後編:「昆虫食ってどんな企業が何してるの?」
の2本立てでお送りします。
今回は前編ということで、昆虫食が注目されている背景について、みなさんと共有できればと思います。
1. タンパク質危機
2. 昆虫食の良いところ(一応注意点も)
3. 昆虫食の歴史と今
という流れで進んでいきます。ぜひ最後まで読んでみてください。
1. タンパク質危機
現代の急激な世界人口の増加によって食糧、特にタンパク質の需要が急増しています。
穀物を含めたタンパク質供給量も年間0.9~1.2%程度増加しているのですが、その需要は、年間で2.4%以上の伸びを見せています。
2050年には2005年のおよそ倍の需要となる試算もあり、この需要が供給によって満たされなくなることを俗に「タンパク質危機」と言います。
これは2025~2030年の間、早くて3年後には顕在化してしまう問題だと指摘されています。
この世界的なタンパク質危機を乗り越える手段として、
タンパク質が豊富な昆虫食が今注目されているというわけです。
2. 昆虫食の良いところ(一応注意点も)
「でもなんで昆虫なの?代替肉とかあるじゃない?」という方もいるかと思いますので、
昆虫食の具体的なメリットについて触れてみたいと思います。
①飼育時の環境負荷が少ない
昆虫の生育は、牛や豚などの家畜類と比較し、温室効果ガスの排出が圧倒的に少ない傾向にあります。
全世界の温室効果ガスの約14%は畜産業由来だとされています。
原因としては、牛のゲップや排泄物など家畜そのものから排出されるものに加え、
エサの生産や輸送、糞尿の処理時に発生する温室効果ガスも大きい要因となっています。
なお一例として、昆虫食の代表であるコオロギを生育する場合のタンパク質1kgあたり温室効果ガス排出量は、
牛の28分の1、豚の11分の1程度であることが知られており、相当量の排出抑制につながります。
ちなみに必要な水の量で比較すると、昆虫でタンパク質1kgを生産するには4Lの水が必要なのに対し、牛の場合はなんと22,000Lも必要なんだそうです!
②高い栄養価
昆虫によって含まれる栄養素は異なりますが、主にタンパク質や不飽和脂肪酸、カルシウム、鉄、亜鉛などを含みます。
その中でもタンパク質を豊富に含んでいるため、牛や豚肉の代用品、タンパク質危機を救う存在として注目されているのです。
とりわけ、乾燥させた昆虫は栄養効率が非常に高いことで有名です。
先述のコオロギを例にとってみると、粉末コオロギ100gあたりタンパク質は約76g摂取が可能です。
同じ量のタンパク質を摂取するには、鶏むね肉なら約300g、牛乳なら2L、卵なら10個以上食べる必要があります。
さらに低カロリー。ダイエット管理にもおすすめの食材なんだとか。
(鶏むね肉300gの方がコオロギの粉末100gより食べるの簡単だよ、という気持ちは分かります。使い勝手が良いのです。次で説明しますね。)
③生産・加工が容易
昆虫は、牛や豚に比べて成長スピードが速く、短期間で大量出荷ができることも大きなメリットの1つです。
そのため、食糧危機対策や安定した食糧供給には最適な食材です。
例えばコオロギは、産卵から出荷まで1~1.5か月ですが、豚は最短でも3か月、肉用牛になると約30か月もかかるそうです。
さらに、家畜の場合は非可食部があるためどうしても食品廃棄物が発生してしまいますが、
昆虫食の場合は、それが極めて少ない・発生しないため、調理・加工がしやすいというメリットもあります。
先程のパウダーやペースト状にした昆虫は非常に便利で、小麦粉と混ぜればパスタやラーメンなどの麺やパン、クッキーが作れます。
タンパク質やその他栄養価も高いので、栄養補助食品としての活用も十分に可能です。
(これなら食べれそうだと思えてきませんか。)
念のため、デメリット・注意点についても触れておくと、
・野生の昆虫の場合は衛生面や毒の心配があるので、昆虫食用として養殖されているものを選ぶ。
・甲殻類アレルギーをお持ちの方は注意。
・現状は生産の知見が蓄積されておらず、若干高価。
という点などが挙げられます。
3. 昆虫食の歴史と今
そんな昆虫食は、現在でも世界の約19億人が2,000種類を食べていると言われていますが、
日本でも「イナゴの甘露煮」や「ハチノコの煮物」などは有名ですよね。(どちらも中部地方の伝統料理ですが)
江戸時代に編纂され日本の食物全般をまとめたものとされる『本朝食鑑』にも、「イナゴは農家の子どもが炙って喜んで食べる」との記載があるほどです。
しかしその後の日本では、食の欧米化に伴い、昆虫食文化の影が薄くなっていったそう。
ただ、世界にはその文化が色濃く残る地域もあります。
中国では薬用・滋養食物として昆虫を食べる伝統があり、かつてはあのゴキブリも貴重な薬とされていたそうです。
タイでは、屋台で昆虫食が売られているほどポピュラーで、人々もスナック感覚で楽しんでいるのだとか。
メキシコでは部族ごとに昆虫食の伝統があり、現在でもバッタのスナックやイモムシを蒸留酒に入れて愉しむなど、昆虫食文化が根付いています。
アフリカでは、地域差はあるものの、アリやイモムシなど多様な昆虫がメジャーです。
我々が牛の腸(ホルモン)や発酵させた大豆(納豆)などを食べているのを見て、アメリカ人が驚いているのと同じように、
我々日本人がただ単純に食べなれていないだけなのかもしれません。
慣れてしまえばこっちのものということで、数年後には日本人の大半がみんな昆虫を食べている世界が広がっているかも。
今回はここまでです。ここまでお読みいただきありがとうございました。
昆虫食の世界の背景について、
1. タンパク質危機
2. 昆虫食の良いところ(一応注意点も)
3. 昆虫食の歴史と今
という3つの切り口で見てみましたが、いかがでしたでしょうか。
少しでも興味を持っていただけていたら嬉しいですし、
次回、後編として「昆虫食ってどんな企業が何してるの?」というテーマでみなさまにご紹介できればと思ってますので
そちらもお読みいただければ何よりです。
後編もお楽しみに!
NTT東日本