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2024年2月26日 8:00

更新

2024年5月8日 3:52

VOL5.【アンチ・ドーピング①】スポーツの価値を通してより良いスポーツの未来・社会を創る~

全体公開

はじめに

 日頃よりスポーツを通した国際貢献・国際協力に従事されているみなさんにとって、一言で「スポーツの価値」「スポーツのチカラ」とは何か、と聞かれるとどのように答えられますか?

ご存知の通り、「スポーツの価値」という言葉は、 “SPORT FOR TOMORROW (スポーツ・フォー・トゥモロー: SFT)”のキーワードであり、新型コロナウイルス感染症 (以下COVID-19)により様々な社会的な活動が制限された中でも核となる言葉でした。COVID-19により「ソーシャルディスタンス」が当たり前とされ、アスリートが日々のトレーニングを実施できず、東京2020大会もオリンピック競技大会史上初めて延期を余儀なくされた際も、人々の気持ちを前向きにするようなスポーツの価値に関連する言葉が発信されました。困難中でも、東京2020大会が開催されたことにより、スポーツが人々や社会に勇気を与え、困難を乗り越えるチカラを持っていることを再確認したことはみなさんの記憶にも残っているかと思います。

「アンチ・ドーピング」や「ドーピング」という言葉を聞くと、もしかしたら「トップアスリートだけに関係するもの」や「自分たちの団体とはあまり関わりが薄いもの」という印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、誰もが楽しく、自己ベストを求め、自己開花することを求めるスポーツは、クリーンであることを大前提としています。その下支えになっているのがアンチ・ドーピング活動であり、アンチ・ドーピング活動はクリーンスポーツ環境を守り、スポーツの価値を育み・創り、スポーツの価値を未来につなげることを目的としています。

今回は、国際協力・交流などを通して、様々な社会課題の解決を達成することを目指しているみなさんに、アンチ・ドーピング活動の目的、つまりアンチ・ドーピング/クリーンスポーツの根底にある「スポーツの価値を守り・創る」活動としての基本的な考え方について知っていただきたいと思います。

 

『制限の中から生まれる美』by 室伏広治氏

 スポーツにおける制限は「ルール」です。…(中略)「ルール」という制限を設けないと、考えて努力するスポーツの醍醐味から、外れてしまうアスリートが出てきてしまうかもしれない。ルールがあるからこそ、競技の本質を追求する楽しさに触れることができ、ライバルとの真剣勝負に面白さを感じられるのでしょう。…(中略)スポーツに「美」は大切で、制限・ルールの中から美しさが生まれると、私は考えます。

 これは、現スポーツ庁長官・室伏広治氏が、JADAの “TRUTH in Sport, TRUTH in ME” (スポーツの中にある真なるチカラ・自身の中にある真なる想い)を語る、東京2020大会のレガシープロジェクトの一環である「PLAY TRUEリレー」インタビューの中で語っている言葉です。


 (室伏広治氏「PLAY TRUE リレー」インタビュー:https://www.playtrue2020-sp4t.jp/ptrelay/jp/interview/01_murofushi/)


 室伏広治氏は、長官に就任されるまで、JADAと世界アンチ・ドーピング機構(WADA)のアスリート委員を務め、スポーツの価値を発信してきています。

インタビュー内での室伏氏の言葉にあるように、スポーツの中にあるルール、つまり、「アンチ・ドーピングのルール」は、全世界におけるスポーツ共通の約束事で、スポーツにおける「美しさ」を追い求める個々人の努力や、人間としての成長を称えるための大前提として位置づけられています。

 

多様なスポーツの価値

 スポーツが持つ内在的/外在的な価値・チカラは、人によってそれぞれ感じ方や表現の仕方が違います。

WADA は、スポーツに内在する価値を「スポーツの固有の価値」もしくは「スポーツの精神 (spirit of sport)」と表現し、それが守られることで、スポーツを通して実現する外在的な価値に反映されていくとしています。そして、「ドーピングはこのスポーツの価値・スポーツの精神に根本的に反するものである」と記されています。


(世界アンチ・ドーピング規程の「世界アンチ・ドーピング規程の基本原則」に記載。参考:https://www.playtruejapan.org/code/provision/)

 スポーツのすばらしさ・美しさ、つまりスポーツの持つ価値を守り・創っていくことがアンチ・ドーピング/クリーンスポーツ活動の目的です。

スポーツを通してこうなりたいなと想う気持ちや達成したい自身の姿に対して、ウソ偽りなくその姿に努力して近づいていくことができること。上記室伏氏へのインタビューのテーマである “TRUTH in Sport, TRUTH in ME” をスポーツに関わる一人一人が守り・育み・創っていくことでクリーンなスポーツを創り、さらにはクリーンなスポーツの舞台でアスリートが競技するからこそ、人々はアスリートの姿に感動し、勇気をもらうなど様々なチカラを感じることができます。


スポーツの価値を世界中へ・未来へ届けるために:i-PLAY TRUE リレー

 ここまでのお話で、スポーツの価値とアンチ・ドーピング/クリーンスポーツについて少しでも身近に感じていただけたでしょうか?JADAでは、スポーツの内在的/外在的価値を、スポーツをする・見る・支える世界中の様々な方々と共有し、未来に届けるスポーツの価値は自身で創ることができるという体験を通して、スポーツでさらにつながるための取組「i-PLAY TRUE リレー」を行っています。


 「i-PLAY TRUE リレー」

(これまでに投稿された様々な写真やメッセージを覗くことができます!みなさんから、みなさんの活動での参加もお待ちしています!

https://www.realchampion.jp/playtrueplanet/)


 i-PLAY TRUEリレーは、初代スポーツ庁長官・鈴木大地氏とWADA・JADAアスリート委員らと、Tokyo2020のレガシーとして2018年(平成30年)にスタートし、延べ2万人以上の世界の方々とスポーツの価値を共有し発信してきました。

みなさんにとっての「スポーツの価値・チカラ」と共通するものがあるか、図3に記載のウェブサイトからぜひ探してみてください!

 

参考文献

i-PLAY TRUE リレー

https://www.realchampion.jp/playtrueplanet/

PLAY TRUE リレー

https://www.playtrue2020-sp4t.jp/ptrelay/jp/

World Anti-Doping Code/世界アンチ・ドーピング規程

https://www.playtruejapan.org/code/provision/ (日本語訳)

 

執筆者情報

堀さやか(ほり さやか)公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構 教育部教育・企画グループ グループ長代理

2013年JADA入職時より、SFT事業を担当、言葉に依拠しないスポーツの価値・マンガ教材「Real Champion Education Package」の制作や、 Tokyo2020大会のレガシー事業であり、エンゲージメントブース「PLAY TRUE Planet~Sport & Art」を担当。大切にしているスポーツの価値は「Sport is universal and connects people!」

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