
2022年10月12日 12:00
2022年10月12日 6:22
Startup File Vol.01 株式会社ブリングアウト
こんにちは。ON-SITE Xコミュニティマネージャーの小松です。
建設業向けDXコミュニティON-SITE Xは2022年7月20日の立ち上げ後、様々なスタートアップとの出会いを経験しました。おかげさまでたくさんのお問い合わせをいただき、ありがとうございます。
そのようななか、立ち上げから当コミュニティに参画くださっている、 AIによる会話分析を手掛ける株式会社ブリングアウトのサービスが、会員企業二社に導入されることが決定いたしました!
建設業向けに開発されたわけではなかったプロダクトでしたが、ON-SITEXを通じて建設会社と出会い、トライアルを経て建設業界の課題にマッチするプロダクトであることが実証され、この度の正式導入に至りました。
今回は、株式会社ブリングアウトのCEO 中野慧さんにインタビューさせていただき、ON-SITE Xとの出会いから、建設業との協業についてお話を伺いました。実際に導入を決めた二社からもどのような課題解決に繋がったかコメントをもらっていますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
ブリングアウト株式会社 CEO 中野慧さん
東京大学教育学部を卒業後、Bain& Company JapanInc.にて7年間コンサルティング業務に従事した後、株式会社リクルートにてスタディサプリの領域責任者、新規事業開発部長を歴任。HRtech ベンチャーのCEOを経て、37歳で株式会社ブリングアウトを創業。
株式会社ブリングアウト 企業概要
独自のAIを組み合わせた99%の精度の文字起こし機能と、特許出願中の、重要な商談結果の自動抽出機能を提供することで、営業の事務工数削減や商談の勝率を向上させるサービスを提供。文字は音声とリンクしており、気になる箇所はすぐ再生して実際の音声の確認が可能。更に重要箇所の抽出は顧客のビジネスモデルを踏まえてセミカスタマイズにも対応。AI技術提供のみならず、顧客ビジネスにまで踏み込んだコンサルティング力にも注目が集まるスタートアップ。
Bring Outデモ画面
左側に99%の精度で話者ごとに文字が起こされる。右側には各社が定義した重要箇所だけ抽出される。
中野さんインタビュー
—静岡県三島市に移住してきたことをきっかけに、ON-SITE Xと知り合ったと伺いました。そのあたり、詳しくお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。
中野:
大学進学で田舎から出てきて、新卒から都心で暮らしてきたのですが、のびのびした場所で子育てをしたくなって三島に移住してきました。東京にいるときから起業はしていたのですが、加和太建設さんが起業家支援施設のLtG Startup Studioを三島でオープンして、スタートアップ企業を募集していることを知って応募し入居しました。その後、加和太建設の代表であり、ON-SITE Xのコミュニティオーナーでもある河田さんから、ON-SITE Xを立ち上げるとのことでお誘いいただいたという流れです。加和太建設さんに先にトライアルを進めていただき、木内建設さんにもお繋ぎいただきまして、この度二社に導入いただくことが決まりました。
—改めておめでとうございます!今回建設会社と仕事をしてみて、何か感じたことはありますか?
中野:
建設業界に対しては正直言うとアナログなイメージを持っていました。ただ今回、加和太建設さんや木内建設さんと関わって、両社の社長さんも、担当してくださった社員の方も、前向きにDX していこう、どんどん新しいツールを使ってチャレンジしていこうという気持ちがすごく強いなという風に感じたんですね。新しい時代に合わせて生産性をどんどん上げていく必要性を感じ、思い切って切り替えてやろうとされていく姿勢は素晴らしいなと思いました。
—今後ともぜひ建設業界をよろしくお願いいたします。(笑)
さて、少し御社についても伺えればと思います。新聞の一面も飾り、今や大注目のスタートアップですが、起業のきっかけはどのようなものだったのですか?
中野:
新卒で外資系のコンサル会社で働いていた時代から、新しく社会的意義がある事業を立ち上げたいという思いを持ち始めました。ですが、事業を立ち上げた経験もなければ、そのような人脈もなく、うまく考えがまとまらず過ごしていたときに、リクルートで「スタディサプリ」という新しいオンライン教育事業を立ち上げるという話があったんです。もともと教育学部出身であり、社会的にも大きな意義がある事業だと感じてリクルートで働き始めました。
スタディサプリの事業を拡大させる中で、動画を活用し、知識や知恵を広めていくことの価値を改めて強く感じ自分がやりたいことが少しずつ明確になってきました。
勉強に閉じずに、ビジネスにおいて様々なノウハウが共有されていくような世界観が作れれば、と思い構想を練っていたのですが、これまでブラックボックスだった「商談の音声」に着目し、創業したのが今の会社です。世の中的にオンライン会議がどんどん当たり前になってきて、録音するという行為へのハードルがどんどん下がってきていますよね。全ての会議や会話がデータとして溜まることが当たり前になってくるのであれば、そこから良い情報がピックされる可能性は無限大。じゃあそれでいこう!と。
—確かに、御社のサービスはただ単に話者分析して議事録を起こすだけではないですよね。サービスのコアはどのようなところにあるんでしょうか?
中野:
音声処理や言語処理は、これまでブラックボックスだったものをデジタル化してデータ化するための手段。それが済んできれいになったデータを解析し、利用につなげていくところがコアな部分です。1時間の商談が全部きれいに文字起こしされて出てきたとしても、全部は絶対に読まないですよね。我々はコンサル出身というバックグラウンドを活かして、商談全体を構造化することとそれに合わせて重要事項の自動抽出のAIモデルを組むことができます。
例えば、成約率の高い人が聞いていることや、予算を聞き出すときの効果的な質問方法などを整理します。そのうえで、御社のビジネスではこういう商談の構造にすると良くて、このようなキーワードを使って情報を聞き出しましょう、我々はそのキーワードから情報を拾えるAIを組みますよっていうことを、半分ビジネス半分技術みたいな形で詰めていけるところが強みだと思っています。
—なるほど。今後はその技術をどのように活かしていかれるのですか?
中野:
今後は業界や課題解決シーンを増やしていきたいです。
例えば、加和太建設一社と協業させていただいて、建築営業の商談ではこういう情報を取らないといけないというのが分かったとしたら、それは他の建設会社さんでもほとんど同じじゃないですか。会議の内容はもちろんオープンにはしませんが、他の業界・企業の会議の進め方を転用するなど、クラウドでみんなで情報を出し合ってみんなで高め合っていくことができる。
僕らのサービスって議事録作成を楽にするというよりも、仕事の時間の大半を費やしている会話の時間をより建設的に、より効率的にすることを目指しているんです。
—まさにキャッチコピーの「商談を資産にする」ですね!最後に、建設業界との展望やメッセージをお願いします。
中野:
建設業のなかでも、特に営業や設計担当の方は会話している時間って本当に長いじゃないですか。そこがDX化され効率化されていく余地って非常に大きいと思っているんですね。解決できる課題は、言った言わないの解消かもしれないし、メモを取る手間が省けるとか、一回一回ちゃんとアジェンダが進捗していくとか、建設業界での会議の進め方のベストプラクティスみたいなものを導入することによって会議の質が上がるみたいなことかもしれない。いろんなDX の可能性があると思っていて、それを業務の大半を占める会話情報をベースにして考えられることはかなり大きな機会だと思っています。そこをいち早く一緒にチャレンジして新しい働き方モデルみたいなものを作っていけるといいなと思っています。
—中野さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました!
導入各社の声
打ち合わせの齟齬による対応コストの削減と会議の質向上に寄与するシステム
木内建設株式会社 代表取締役社長 木内 藤丈氏
当社ではお客様と設計及び営業担当者との打ち合わせの部分で導入しました。毎年図面の不整合により施工現場において多数の修正対応が発生しており、その原因は打ち合わせの齟齬によるものがほとんどでした。そのためお話を伺ったときに、当社東京エリアでの主たる業務であるRC共同住宅の打合せにおいて、すぐに成果が出ると直感しました。
今回の正式導入は当社東京本店で進んでいますが、今後は現場での発注者との定例会議、全社的な展開を考えています。また今回は設計打合せでの採用でしたが、現在は建築現場での発注者との定例会議、また本来の営業推進の場面での採用検討も社内で進めています。AIカスタマイズ検討時の丁寧なフォローや実務的なアドバイスをしていただくことによって、会議・打合せの本来の目的や進め方がより明確になることも期待しています。
議事録作成だけではなく、事務作業・チーム共有の効率化につながりました
加和太建設株式会社 営業部 三澤 康介氏
これまでは商談の録音データを聞きながら議事録を手入力しており、1時間の商談の議事録作成に2〜4時間かかることも。今回の導入で議事録作成の事務作業時間が減り効率化できました。また、自動抽出された項目で大枠が理解できるので、共有される側の時間短縮にも繋がっていると思います。
担当者の方が丁寧に伴走してくれたのも印象的でした。トライアル期間も長く取ってくれ、終了後は全員に電話で使い心地をヒアリングし要望を聞いてくださいました。例えば、スマホで録音したデータをパソコンを介さず直接アップロードしたいという要望をお伝えしたところ、実装してくださいました。移動時間を使って処理を進められるようになって、助かっています。
Bring Outがある安心感でよりお客様に向き合えるようになりました
加和太建設株式会社 営業部 伊奈敦美
私は専門的な内容の商談だと、打ち合わせ中はメモを取ることに必死になってしまっていたんです。でも今は文字起こしも重要箇所の自動抽出もしてくれるという安心感があり、商談により集中して一層お客様に向き合えるようになりました。自動抽出される項目も、建設営業では何が重要事項なのかを私たちにヒアリングをしてくださって、スケジュールと予算に関する項目を設定していただきました。AIがより正確に抽出できるように、私たち営業担当が「スケジュールはこうですね」とか「結論こういうことですよね」と発言することで、会議がなんとなく流れて行くのではなくて明確に決まっていくと思います。まだそこまでは行きついていないのですが、使っていくなかで打ち合わせの進め方を改善することできるツールだと思います。
コミュニティより
私たちON-SITE Xはスタートアップ企業との共創を通じて建設業界全体の発展に貢献していきたいと考えています。「会議の進め方」「音声の分析」という切り口で、ホリゾンタルに業界を繋ぎ、共有することで全体を高めていきたいという中野さん。目指す方向性を共にできるスタートアップとの出会いは本当にありがたいことです。
中野さんのお話を聞いていて、今後音声がある程度綺麗な状態で出てくることが当たり前の世界になったときに、各社や各個人が本当に提供すべき価値が何かを問われる時代になってくると感じます。単なる議事録のデジタル化ではなく、選ばれる理由を作っていく建設営業の業態変革の未来を感じました。
ON-SITE Xでは、新たに建設業界に参入したいというスタートアップを募集しています。プロダクトをお持ちでなくても、お持ちの技術をどう活かせるかディスカッションしたいというご要望にもお応えします。ON-SITE Xの詳しいご紹介はリンクよりご確認ください。
小松 央美
ON-SITE X運営事務局
まだコメントがありません。コメントしてみましょう