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2024年10月23日 12:00

更新

2025年1月21日 3:21

VOL25.【健康・スポーツ医学】スポーツ活動中の重大事故の管理と予防(1) 暑熱環境下のスポーツ

コミュニティ限定

はじめに

 皆様は、スポーツを通じた活動を実施する上で、参加者の怪我・傷害の予防を講じていますか?スポーツを用いた国際開発に従事するアクターは、基本的な知識の一つとして、スポーツ外傷・障害の予防方法を理解しておく必要があります。

 これまでスポーツ活動中の事故に対する一般的な考え方は、本質的にスポーツが受傷リスクを内在していることを背景に、参加者の自己責任として扱われてきました。しかし、スポーツ医科学の飛躍的進歩により様々な事故が予見できつつある今、管理運営者や指導者が科学的根拠に基づいて事故予防に取り組むことは当然の責務といえます。本稿では「暑熱環境下のスポーツ」を取り上げ、地球規模で進行する温暖化とスポーツ活動のリスクについて考えていこうと思います。

 

<世界の年平均気温>

 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)の第6次評価報告書(2021)によると、世界平均気温は工業化以前の近似値(1850-1900年)から現在(2011-2020)までに1.09℃上昇し、1970年以降、経験したことのない速度で上昇しているとしています。また、2024年7月にはコペルニクス気候変動サービス(Copernicus Climate Change Service:C3S)が世界の平均気温が17.15℃と観測史上最高になったことを発表しています。これらの急激な気候の変化は、日常生活に甚大な影響を与えると同時に、スポーツ活動がこれまでのように実施できなくなりつつあることを示唆しています。