Tailor Works for Community
ログイン新規登録

2026年3月11日 13:22

共創マガジンvol.4 ~廃棄されているホタテのウロを肥料に!産学連携で実証試験を実施 株式会社Shell Med × 酪農学園大学~

全体公開

地域の課題や可能性に向き合い、企業や自治体、大学・研究機関が連携して新しい価値を生み出す——そんなオープンイノベーションの実例(共創事例)をシリーズでご紹介します! 

廃棄されているホタテのウロを肥料に! 

産学連携で実証試験を実施 

株式会社Shell Med × 酪農学園大学 

ホタテの貝柱についている黒い部分、ウロ(中腸腺)には有害なカドミウムが含まれており、これまでは産業廃棄物として大量に焼却処分されてきました。 

そのウロから有害物質を除去し、有機肥料や養殖用飼料として利活用することを目指しているのが、株式会社Shell Med(北海道札幌市)です。 

STARTUP HOKKAIDOの補助を受け、酪農学園大学と連携してウロ抽出物を用いたホウレンソウの生育について実証試験を行いました。 

酪農学園大学のガラス温室で2カ月試験

2月上旬、株式会社Shell Medのメンバーが酪農学園大学のガラス温室を訪れました。酪農学園大学の園田高広教授に委託した実証試験の結果が出たのです。 

温室内には、ホウレンソウを播種したセルトレイがズラリと並べられていました。 

ウロ抽出物を与えたもの(pHを変えて3種類)のほか、水道水だけを与えたもの、化学液肥を与えたものを同じ条件で栽培。1回目は無加温で、2回目は温床マットを敷いて生育の違いを調べました。 

▲ホウレンソウは寒締めなどに使われる弁天丸という品種。無菌の土を使い、底面給水で栽培しました。 

園田教授が説明します。 

「ご覧の通り、よく育っているのは化学肥料を与えたものです。ウロ抽出物を与えたものはpHにかかわらず、水道水と生育に差がありません」 

確かに、大きく葉を伸ばしているトレイと、葉が伸びきらずに小さいままのトレイがひと目で分かります。 

「味の違いもあるんです」という園田教授。 

「調査は終わっていますので、ちぎって食べてみてください」と勧められ、流水で洗って口に入れてみます。 

化学肥料を与えて大きく育った葉は、みずみずしく、いつも食べているホウレンソウの味がします。 

対して、水道水およびウロ抽出物を与えた小さな葉は、妙に味が濃い。甘みもあるけれど独特のエグミもあります。 

「詳しくは上で説明します」と言う園田教授について、研究室に移動しました。 

▲ガラス温室で、肥料の有無による生育の違いを確認。実際に生食して味の違いも実感しました。 

実証試験で明らかになったこと

園田教授は試験結果をまとめたペーパーを配り、試験概要やデータを詳しく説明してくれました。 

「ホウレンソウの生育については、本葉長、本葉数、地上部生重、糖度などを調べました。ウロ抽出物はホウレンソウの生育には影響していないという結果になりました」 

味の違いについてはこう説明します。 

「糖度を調べると、水道水およびウロ抽出物を与えたものは化学肥料のものより糖度が高くなっています。これは生育したいのに生育できず、葉が縮こまって糖度が上がったものとみられます」 

なるほど凝縮した味になっているわけですね。 

▲酪農学園大学の農場生態学研究室。 

しかし、ウロ抽出物には植物の成長に欠かせない窒素が豊富に含まれています。なぜホウレンソウの生育に寄与しなかったのでしょうか。 

「水道水とウロ抽出物で育てたホウレンソウからは硝酸態窒素がほとんど検出されませんでした。窒素が分子量の大きいアンモニア態あるいはアミノ酸として入っていて、無機のイオン化した窒素と比べて植物が吸いにくい、あるいは吸えないのだと考察します」 

生育寄与への効果が見られなかったことに、メンバー一同、少なからず驚いておりますが、園田教授が力強く付け足しました。 

「ただ、今回はあくまでも肥料としての特性を見るということで無菌の土を使った試験です。実際の畑には微生物がいて、有機物を分解し無機の窒素に変えてくれる。実際の畑で試験をすればおそらく全く違う結果になると思います」 

基礎となるデータが得られたことで、次に進むべきステップが見えてきました。 

▲酪農学園大学の園田高広教授。園芸作物が専門で、アスパラガスの品種改良を研究しています。

株式会社Shell Medと園田教授の出会い

株式会社Shell Medは2025年5月に創業したばかりのスタートアップです。 

今回の説明会にオンラインで参加した同社の技術担当、岩田英之さんは会社設立の経緯をこう話します。 

「道総研(北海道立総合研究機構)がウロに含まれるカドミウムの除去について長く技術開発していて、ウロ抽出物の量産が可能になったことが前提にあります。大量に出る水産系廃棄物を肥料や飼料に有効活用できれば、資源循環につながり、道内での事業創出にもつながると考えて会社を立ち上げました」 

創業の中心メンバー3人は愛知県在住ですが、ホタテの一大産地である北海道に拠点を置こうと、株式会社Shell Medを札幌市に法人登記しました。 

▲左から、酪農学園大学教授の園田高広氏、愛知県で人材業や運送業などを営む3人で株式会社Shell Medを設立した今井大介氏(代表取締役)、佐々木裕也氏(取締役)、山下真吾氏、産学連携をコーディネートしたLocal Innovation Challenge HOKKAIDO 2025事務局(監査法人トーマツ)の小林恭兵氏 

そんな株式会社Shell Medメンバーを園田教授に引き合わせたのは、STARTUP HOKKAIDOです。 

「もともとSTARTUP HOKKAIDOのホームページを通じて創業時からご相談していました。我々だけでは専門的な分析はできないので、ご協力いただける方がいらっしゃれば、とLocal Innovation Challenge HOKKAIDO2025にエントリーさせてもらいました」(岩田さん) 

Local Innovation Challenge HOKKAIDO 2025(通称LICH/リッチ)とは、STARTUP HOKKAIDO実行委員会が主催するオープンイノベーションプログラム。株式会社Shell Medの「北海産未利用資源(ホタテ中腸腺)の有効活用手段の探索」は、プロジェクトとして採択されて大きく動き出します。 

 

2025年10月には猿払村の漁協の協力を得て、ホタテのウロを現地で加工してウロエキスを製造。そのエキスを使った実証試験は、STARTUP HOKKAIDOで一次産業分野のマネージャーをしている白川努さんが、懇意にしている園田教授を紹介し、委託研究として実施されることが決まりました。 

▶白川努さん(STARTUP HOKKAIDO 重点領域マネージャー【 一次産業・食】)

https://startuphokkaido.com/news/2959/ 

園田教授はこの依頼をどのように受け止めたのでしょう。 

私の研究室は農場生態学という名称で、化学農薬や化学肥料を積極的に使わず、なるべく生態系に影響を与えないような農業栽培技術をつくることがテーマです。ですので、今回の試験と目的も合致していますし、北海道の未利用資源を活用するという点でも興味を持ちました」 

STARTUP HOKKAIDOの人脈と支援があって、スピーディーに試験にこぎつけることができました。 

▲酪農学園大学の園田高広教授。「最近はカリウムが過剰になっている畑も多い。ホタテの殻から液体のカルシウムができれば、土壌のバランスを整える資材としてニーズがあるはず」と新たなアイデアも。 

肥料としての形態や使い方も検討課題

園田教授はウロエキスの今後に向けて、こうアドバイスします。 

「可能性は十分あると思いますよ。一般的には、土壌に有機物資材を入れると、微生物活性は上がるはず。病原菌の割合も減って土壌が安定する効果も期待できます。植物本来の力を引き出すBS(バイオスティミュラント)資材はさまざま出てきており、ニーズもある。ただ、エビデンスがない資材が多いので、きちんとエビデンスを捉えた上で提供できればいいと思います」 

既に出回っている有機資材との差別化のためにも、さらなる実証が必要です。 

また、園田教授は実用場面を想定した形態の検討や、魚貝ならではの臭い対策も必要だと指摘します。 

「液肥よりも固形というか半生状態というか、籾殻などで顆粒状にするなど、畑で使いやすく保存しやすい形状だといいですね。ただし、加工すると値段も高くなるのがネック。ウロ抽出物の資材は想定している価格の安さが魅力の一つですから、その兼ね合いもあると思います」

園田教授のアドバイスに、株式会社Shell Medの技術担当、岩田さんはこう応じました。 

「ウロの自己酵素で分解していますが、もしかしたら処理時間でタンパク質の分解が変わるかもしれません。また、ひと手間かけて発酵させてから畑にまく手法も検討しています。まいて土壌で分解させるのか、あらかじめ分解させてからまくのかも検討したいと思います」 

今後の課題や可能性が明らかになってきました。段階を踏んでひとつずつクリアしていかなければなりません。 

オープンイノベーションの価値とは 

今回、STARTUP HOKKAIDOのマッチングで実現した産学共同研究。園田教授はこうした受託研究を多いときは7本ほど並行して動かしていることもあるそうです。 

株式会社Shell Medの岩田さんはオープンイノベーションの意義についてこう言います。 

「大手企業だと知財をどこまで明け渡すのか悩ましいかもしれません。しかし当社のようなスタートアップにとっては、自社で保有していないアセットやリソース、知識を補いあいながら同じ目的に向かうことができるオープンイノベーションは欠かせない取り組みです」 

既に株式会社Shell Medには、肥料を手掛ける企業からNDA(秘密保持)契約をした上での共同開発の話も届いているのだとか。 

「我々は肥料以外にも、ウロエキスを魚粉の代替として養殖用の飼料に活用できないか、いま高知大学の先生とブリやタイで実証試験中です。肥料分野および飼料分野、それぞれパートナー企業とタッグを組んでBtoB向けの事業を始めていきたい。また、助成金などを活用してウロのカドミウム除去を自動化する装置の開発も進め、将来的には販売も手掛けていきたいと考えています」 

水産系廃棄物を資源化し、循環型社会を目指す株式会社Shell Medの挑戦はまだ始まったばかりです。 

(本共創事例のメンバー) 

■株式会社Shell Med  

https://shellmed.co.jp/ 

 

■酪農学園大学 

https://www.rakuno.ac.jp/ 

 

(お問い合わせ) 

■STARTUP HOKKAIDO実行委員会 

https://startuphokkaido.com/ 

コメント(0)

まだコメントがありません。コメントしてみましょう

コメントするにはまずはログインまたはアカウントの新規登録をしましょう