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2026年3月31日 17:10

更新

2026年4月1日 6:39

【視察レポート】【SFTアクション+】 J-ABSと読売巨人軍の団体連携によるスポーツ国際協力モデルの構築 ー3か国巡業における野球普及・人材育成事業

全体公開

本稿では、SFTコンソーシアム会員等事業支援プログラム(SFTアクション+)を活用して実施された、一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構(J-ABS)および読売巨人軍による連携事業について、2026年2月に実施したボツワナ共和国ハボローネでの視察内容を中心に紹介する。


本事業は、アフリカ地域における野球・ソフトボールの普及および指導者育成を目的とし、日本式野球の理念を基盤とした人格教育プログラム「ベースボーラーシップ®教育セミナー」と野球クリニックを組み合わせて実施されたものであり、南部アフリカのうち、レソト・マラウイ・ボツワナの3か国に渡って連続して実施された。

【活動団体紹介】
一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 (J-ABS: Japan-Africa Baseball and Softball Foundation)
アフリカで野球・ソフトボールの普及活動を通じて「人づくり」「架け橋」「競技振興」を目指す団体。日本式野球の価値観を基盤とした教育的アプローチ「ベースボーラーシップ®」の理念を通じて、野球のチカラで『規律/Discipline・尊重/Respect・正義/Justice』などの精神をアフリカの若者たちに育むことを目指す。

​■ 株式会社読売巨人軍
プロ野球球団を所有するほか、ジャイアンツアカデミーを中心に国内外で野球振興および人材育成に取り組んでおり、近年は国際協力の分野においても活動の幅を広げている。アフリカ地域においては、JICAやJ-ABSとの連携を通じて野球クリニックや指導者育成事業に参画し、現地の若年層や指導者に対する技術指導を実施してきた。

 
▶ SFTコンソーシアム会員等事業支援プログラム(SFTアクション+)とは?

SFTアクション+は、SFTC正会員が国内外で取り組む「SFTアクション(スポーツを通じた国際交流・協力活動)」を推進するにあたり、課題解決の一助となることを目的として、旅費(航空賃・宿泊費)ならびに諸謝金を支援するプログラムである。2024年度に開始された。
昨年度は13団体、今年度は11団体が採択され、世界各国でスポーツを通じた国際貢献や社会課題の解決に取り組んでいる。

▽詳細はこちら:
https://www.sport4tomorrow.jpnsport.go.jp/jp/news/news-release/r7_sftactionplas/


1.ボツワナでの活動

■ 政府機関および関係機関との面会
スポーツ・芸術省および児童福祉・基礎教育省を訪問し、Hon. Jacob Kelebengスポーツ・芸術大臣やSteve Bothasitse基礎教育担当事務次官とのMTGにて本事業の目的やベースボーラーシップ®教育についての説明を行った。また、在ボツワナ日本国大使館およびJICAボツワナ事務所への訪問も行うことで、多様な現地関係機関との協力体制構築を目指した。

写真(左):ボツワナスポーツ・芸術大臣/Hon. Jacob Kelebeng氏(左から4番目)との面会
写真(右):基礎教育担当事務次官/Mr. Steve Bothasitse氏(右から4番目)との面会

■ パートナーシップ協定締結の署名式
J-ABS の主軸事業「アフリカ55甲子園プロジェクト」の一環として、ボツワナソフトボール連盟との「ベースボーラーシップ®教育パートナーシップ協定」の署名式を実施。(署名式は、レソト・マラウイでも同様に実施)
現状ではボツワナソフトボール連盟となっているが、将来的には「野球・ソフトボール連盟」と組織変革をすることを目指している。


ボツワナソフトボール連盟 Tirelo Mukokomani会長との署名式

■ 野球クリニック
読売巨人軍の東野峻アカデミーコーチによる野球クリニックが実施され、地元の中学生およびソフトボール指導者が参加した。ボツワナではJICA協力隊の派遣などを通じてソフトボールが普及しているため、基本的な投球や捕球動作の理解度は高く、ゲーム形式の練習も円滑に進められていた。
元プロ野球選手による直接指導は参加者の関心を大きく集め、野球への興味喚起という点で一定の成果が見られた。

東野コーチによる野球クリニック

■ ベースボーラーシップ®教育セミナー
ソフトボール指導者を対象としたベースボーラーシップ®教育セミナーが2日間にわたり開催され、約30名の指導者が参加した。参加者の多くはソフトボール経験者であり、スポーツを通じた規律や価値教育の重要性に対する関心が高く、指導方法や教育的効果について具体的な質問が多く寄せられていた。


ソフトボール指導者が多く参加したベースボーラーシップ®教育セミナーおよび物品提供

■ ベースボーラーシップ教育スクール事業の展開検討のための学校訪問
今後の教育プログラム展開の可能性を検討するため、私立学校Maru a Pula International Schoolを訪問し、学校関係者との意見交換を実施した。同校では体育教育やスポーツ活動が積極的に行われており、スポーツ教育を通じた人材育成の観点から、本プログラム導入の可能性について前向きな意見が聞かれた。
長期的なビジョンと将来的なビジネスモデルの実現を目指し、アフリカ渡航の機会を最大限に活用した取組である。

Nick Evans学校長・教職員との打ち合わせ

2.J-ABSと読売巨人軍の連携による事業推進モデル

本事業は、アフリカ地域で継続的に野球普及活動を展開してきた一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構(J-ABS)と、日本のプロ野球球団である読売巨人軍が連携して実施されている点に特徴がある。

J-ABSは、アフリカ各国の野球・ソフトボール連盟や教育機関、政府機関とのネットワークを有し、南部アフリカ地域において継続的に野球普及活動を展開してきた。一方、読売巨人軍はジャイアンツアカデミーを中心に、長年培ってきた野球指導ノウハウを有しており、元プロ野球選手や専門指導者による技術指導や育成プログラムの提供を強みとしている。
今回の事業では、J-ABSがレソト・マラウイ・ボツワナの3か国を巡回しながら教育セミナーの実施や現地関係機関との調整を担い、読売巨人軍はマラウイから合流し、マラウイおよびボツワナの2か国で野球クリニックを実施する形で役割分担が行われた。

このように、現地ネットワークを有する国際協力団体と、高い指導力とブランド力を持つプロスポーツ組織が連携することで、事業の実効性と発信力の双方が高められている。現に、野球クリニックを担当した東野コーチの面会の様子が写る他団体のSNS投稿の閲覧数が急増していた。


また、助成金の活用という点においても、単独団体での事業計画よりも他団体と連携した事業計画のほうがインパクト・質・実現可能性・持続性など様々な観点で信頼度が高くなることから推奨されるケースも多くあるとされている。
これらのことからも、このような団体間連携モデルはスポーツを通じた国際協力事業の実施において有効な形態の一つであり、今後のSFT事業においても参考となる事例であると考えられる。

3.国際的なトレンドに応じた事業展開

2025年8月に横浜で開催されたアフリカ開発会議(TICAD9)では「共創」や「人材育成」がキーワードとなっていたが、その他のアフリカにおける国際トレンドにも照らし合わせて、本事業を評価していきたい。

■ Agenda2063との関連性 ― スポーツを通じた人材育成
アジェンダ2063(Agenda 2063)とは、アフリカ連合(AU: African Union)の前身であるアフリカ統一機構(OAU: Organization of African Unity)の結成50周年にあたる2013年に決定され、2015年1月31日のAU首脳会合に採択されたアフリカ大陸全体における長期開発ビジョンである。7つの目標とそれを達成するための15のプログラムが設定されている。


ここでは、スポーツは若者の教育、健康、社会統合を促進する重要な分野として認識されており、人材育成や社会的価値の形成において各目標に横断的に寄与するツールとして期待されている。スポーツを通じて若者の人間形成を促進する今回の取組は、Agenda2063が掲げる『若者の潜在能力の発揮』や『人的資本の強化』という方向性とも一致する。また、外部から一方的に支援を行うのではなく、現地指導者の育成を通じて持続可能なスポーツ環境を構築することを目指すアプローチは、アフリカ自身の能力強化を重視するAgenda2063の理念とも高い親和性を持つ取組であるといえる。

■ 2026年ダカールユースオリンピックとBaseball5の可能性
アフリカで初めてとなるオリンピックイベントである「第4回ユースオリンピック競技大会」が2026年にセネガル・ダカールで開催される予定である。これはアフリカにおけるスポーツ発展の象徴的な出来事であり、若年層を対象としたスポーツ振興や人材育成の機運を高める契機になると期待されている。そして、世界野球ソフトボール連盟(WBSC: World Baseball Softball Confederation)が推進している新しい都市型スポーツ『Baseball5』が正式種目として採用され、道具や広いグラウンドを必要とせず、ボール一つで実施できることからアフリカ地域における野球・ソフトボール普及の可能性を広げる競技として注目されている。

これまでJICAとの長年にわたる連携のもと、ソフトボールを中心とした支援が継続的に行われてきたボツワナではベースボール型種目に対する理解度はアフリカ諸国の中でも比較的高い水準にあり、現地コーチによると、アフリカ予選を通過し、ユースオリンピックゲームズへの出場を果たすポテンシャルを有しているとしていた。

ボツワナにおいては、2024年パリオリンピックの陸上競技・男子200mで金メダルに輝いたLetsile Tebogo選手および4×400mリレーで銀メダルを獲得した選手たちが写された記念紙幣が発行され、国民のスポーツへの関心や期待が高まっている。仮にBaseball5でユースオリンピックへの出場を果たした場合に、そのインパクトは単なる一競技の成果にとどまらず、ベースボール型種目全体の認知度向上や競技人口の拡大に繋がることが期待される。このタイミングでの野球を通じた支援事業の展開は非常に良いタイミングだと考えられる。

■ 野球普及における国際モデルと日本の位置づけ
 近年ではメジャーリーグ球団であるロサンゼルス・ドジャースがアフリカのウガンダ共和国において育成拠点(アカデミー機能)を有するプログラムに関与するなど、アフリカにおける野球人材の発掘・育成を視野に入れた動きも見られている。こうした取組は、将来的なトップレベル選手の輩出を目的とした「タレント発掘型モデル」として位置づけることができる。


 一方で、日本のプロ野球球団や関連団体がこれまで展開してきた国際活動は、指導者育成や教育的価値の普及を通じた人材育成を重視する点に特徴があり、競技力向上のみならず、スポーツを通じた社会的価値の創出を目的としている。このように、MLBに代表されるタレント発掘型モデルと、日本が強みとしてきた教育・国際協力型モデルは、目的やアプローチにおいて異なる方向性を有している。


 今後、アフリカにおける野球普及が進展する中で、日本のプロ野球チームや関係団体がどのような立ち位置で関与していくのかは重要な論点となる。すなわち、将来的な競技人材の発掘を志向するのか、あるいは教育や社会開発を重視した人材育成に軸足を置くのか、あるいは両者を組み合わせたハイブリッド型のモデルを志向するのかといった戦略的な整理が求められる。

4.J-ABSが目指すビジネスモデル

ベースボーラーシップ®教育を持続的なものにするためにJ-ABSが目標としているビジネスモデルについてご紹介するとともに、特徴となる下記の点について触れたい。
① ベースボーラーシップ®教育に基づき、各国でベースボーラーシップエデュケーターを育成
② 月謝制のベースボーラーシップ®教育スクールを開講し、エデュケーターによる指導
③ ベースボーラーシップ®教育受講者は非認知能力の向上が期待される
④ 売上は50%がコーチ、40%が運営費、10%がロイヤリティとしてJ-ABSに分配(※注:配分率は予定数値)
⑤ ロイヤリティは、アフリカでは購入困難な野球道具の購入・輸送に充てる

アフリカにおいて本仕組みを確立させることは容易ではないが、教育・収益・資源供給を循環させる仕組みを構築することで、外部支援に依存しない持続可能なスポーツ普及モデルの実現を目指している点は大きな特徴であり、その意義は極めて大きいといえる。

5.今後に向けて― グッドプラクティス創出とアフリカ全体への波及 ―

今回のSFTアクション+を活用した3か国巡業(レソト、マラウイ、ボツワナ)では、いずれの国でも政府機関(教育省やスポーツ省)やJICAとの面会の機会が設定されていた。これらの機関は現地において持続的なスポーツ・教育活動を実施するうえで重要な役割を担う組織であり、事業実施と併せて関係構築の機会を設けている点は非常に有意義である。また、各機関との面会調整を現地の連携団体(ここでは各国野球連盟)が担当することで、関係構築の支援に繋がる。
 このような取組は、長期的で持続可能な活動展開を見据えた事業設計として評価でき、SFT事業を実施する他団体にとっても参考となる事例であると考えられる。

また、ボツワナではソフトボールが一定程度普及していることから野球普及の基盤が存在しており、教育セミナーやクリニックに対する理解度も高かった。スポーツを通じた規律教育への関心も高く、教育分野と連携した事業展開の可能性が期待される。ボツワナソフトボール連盟の技術強化オフィサーのRomeo Tshelametse 氏はインタビューに対しても下記の通りに答えており、現地のニーズや状況にマッチした事業を展開できていることがわかる。
「6年前に政府の体制が変わり、公立学校では体育授業が無くなった。また、学校での体罰禁止となったことで、反抗的な生徒が増加してきたことが全国的な問題になっている。そんな状況のなかで、「規律」を学ぶことのできるベースボーラーシップ®教育が紹介されたことは非常に良いタイミングで、是非、そこに貢献することを期待している。」

ボツワナは、ベースボール型種目の普及および人材育成の観点から、今後大きな可能性を有する国であると感じられた。今回の3か国以外にも既に多くの国と連携協定を結んでいる本取組において、今後その中からグッドプラクティスとなる事例が生まれ、それが周辺国へと波及していくことで、アフリカ全体における野球を通じた人材育成が一層拡大していくことが期待されるとともに、今後の展開に注目したい。

プレゼントされたジャイアンツユニフォームを着た参加者たちとの集合写真

ボツワナのセミナー参加者との集合写真

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