
2025年9月1日 13:04
共創マガジンvol.1 ~ごみ拾いの輪を広げて、 苫小牧を「ゼロごみのまち」にしたい!~
全体公開
地域の課題や可能性に向き合い、企業同士や自治体、大学・研究機関との連携で新しい価値を生み出す——そんなオープンイノベーションの実例をシリーズでご紹介します!
ごみ拾いの輪を広げて、苫小牧を「ゼロごみのまち」にしたい!
(株)ピリカ × 山本浄化興業(株) × 生活協同組合コープさっぽろ
SDGsやCSRの一環として清掃活動をしている企業は少なくありません。
もし、あらかじめごみの多い場所が把握できたら、もっと効率的に収集できると思いませんか。
ごみを拾う行為に「ありがとう」と反応があれば、やる気も高まり、もっと多くの人が参加してくれると思いませんか。
今回は苫小牧市で行われた「ごみ拾い」をめぐるオープンイノベーションの共創事例です。
始まりはLocal Innovation Challenge HOKKAIDO 2024
始まりはSTARTUP HOKKAIDOが主催する2024年度のLocal Innovation Challenge HOKKAIDOでした。
頭文字をとって通称LICH(リッチ)と呼ばれるこのプログラムが目指すのは、道内自治体や事業者と国内外のスタートアップの協働による、地域・行政課題の解決です。
株式会社ピリカ(東京都千代田区)はごみ分布調査サービス「タカノメ」で応募し、2024年度に採択されたスタートアップ11社のうちの一つでした。
▲車のダッシュボードにスマホを取り付け、路上ごみの量や分布を定量的に計測する「タカノメ」。ポイ捨ての多発エリアが発見でき、不法投棄パトロールが可能になります。
STARTUP HOKKAIDO(※1)の事務局や、オープンイノベーションの活性化を目指すHOP (※2)のメンバーから、この「タカノメ」サービスを紹介されたのが、苫小牧市のごみ収集を担う山本浄化興業株式会社の代表取締役、山本紘之さんです。
「苫小牧市内では色々な団体がごみ拾い活動を活発に行っており、特にふるさと海岸では年に複数回、清掃活動をしています。ところが他社がごみ拾いした直後だと、それほど落ちていなくて効率が悪い。みんなバラバラに活動するのではなく『チームごみ拾い』としてまとまって、たすきをつなげていくような仕組みができないものかと思っていたので、ピリカさんのSNSには興味を持っていました」
▲ピリカが2011年に最初にリリースしたサービスは、ごみ拾いSNS「ピリカ」。拾ったごみの写真を撮って投稿すると「ありがとう」やコメントが届きます。現在、世界136の国と地域で運用されています。
山本さんは「タカノメ」の実証実験への協力を承諾。専用のスマホキットをごみ収集車や社用車など3台に取り付け、路上ごみの調査を始めました。
さらに「タカノメ」の調査データをもとに、ごみ拾い活動の輪を広げようと、環境保全の取り組みに熱心なコープさっぽろの苫小牧地区委員会へ押しかけて協力をお願いしました。対応してくれたのは苫小牧地区本部の組織統括、高藤優子さんです。
「一緒にごみ拾いの活動ができないかと声を掛けていただきました。もともと苫小牧市のゼロごみ推進課を通じて山本浄化興業さんの存在は知っていましたし、自分たちのまちをキレイにする取り組みなら、少しでもお役に立てればいいなと思いました。コープさっぽろでは『海のクリーンアップ大作戦!』という全道的な水辺の清掃活動を行っていますが、既にピリカさんのごみ拾いSNSのアプリも活用しており、連携もスムーズでした」
▲コープさっぽろでは2021年から毎年「Hokkaido 海のクリーンアップ大作戦!」を実施。今年は全道48カ所で約1万3000人が参加しました。ピリカのごみ拾い促進プラットフォームで専用サイトを作成し、活動の見える化にも取り組んでいます。
苫小牧のフェリーターミナル周辺で「街のクリーンアップ大作戦」
山本さんは「タカノメ」で調査をした上で、ごみ拾いの場所を苫小牧西港フェリーターミナル周辺に決めました。
「フェリーターミナルは苫小牧の玄関口。ちょうど『キッチンカー21トマベイウォーターフロント2025』という大きなイベントが始まるので、キレイにして迎えたいという思いもありました」
ごみ拾いの7月5日(土)は気温28℃という苫小牧にしては暑い日でしたが、山本浄化興業の従業員に加え、コープさっぽろ苫小牧地区委員の皆さんがお子さんを連れて参加したほか、ピリカ サービス事業部の朝緑高太さんも東京から駆け付け、約20名でフェリーターミナル周辺のごみを拾い歩きました。
「思った以上にごみが多かったですね。お子さんたちも『なんでこんなに落ちているんだろう』と疑問を口にしながら、火ばさみ片手に一生懸命に拾ってくれました」(高藤さん)
▲中央分離帯や路肩の茂みにタバコの吸い殻やペットボトルなどが点在していました。水分補給をしながら約2時間、ごみを拾い集めました。
▲みんなで集めたごみを前に記念撮影。右端は東京から駆け付けたピリカ サービス事業部の朝緑高太さん。
今回の共創を通じて得られたものは?
「街のクリーンアップ大作戦!」の終了後、今回の取り組みの感想を皆さんにオンラインでうかがいました。
▲上段左から、山本浄化興業の山本紘之さん、コープさっぽろ苫小牧地区本部の組織統轄、高藤優子さん、ピリカ サービス事業部の朝緑高太さん。
下段は仲介したHOP とSTARTUP HOKKAIDOのメンバー。
コープさっぽろの高藤さんはこう言います。
「今回、道路脇のごみを拾って、ふだん通る道にもこんなにごみがあるんだと気づくきっかけになったと思います。タカノメでごみのある場所が調査できるのであれば、そこに行って『拾ったよ』とSNSに投稿できれば、すごくいいですよね」
これに対し、ピリカの朝緑さんが答えます。
「実はいまその開発をしているところです。いまSNSピリカのWeb版では、タカノメの調査で得たデータを写真として地図上に公開する取り組みを始めています。まだプロトタイプ(※)ですが、今後アプリ版にも広げ、どこにどんなごみが落ちているかスマホで見られるようにしたいと考えています」
(※:取材時点ではプロトタイプでしたが、2025年8月19日に正式に「ごみ拾いスポット表示機能」としてリリースされています。)
▲青い印はSNSピリカのごみ拾い投稿、赤い印は「タカノメ」の調査データによるごみの多く落ちているスポットの表示です。赤い印のスポットでのごみ拾いを投稿すると緑の印が表示されます。
二人のやりとりを聞いていた山本浄化興業の山本さんも、アイデアを付け加えました。
「落ちているごみを拾いに行ったらアプリ上に表示されるだけではなく、拾った人にポイント付与するなど、なんらかのインセンティブがあれば、もっといいですよね」
異業種の三者がそれぞれの立場から意見を出し合う、共創の取り組み。業界の慣習を打ち破るような、新しい気づきや発見をもたらしてくれそうです。
苫小牧を「ゼロごみのまち」に
ピリカのサービスを活用しながら、山本浄化興業とコープさっぽろ苫小牧地区委員会がタッグを組んで実施した今回のごみ拾い。最後に今後の展開についても聞いてみました。
「できれば行政にも参画してもらって活動を広げていきたいです。実施主体が明確になれば、参加者を公募してより大きな規模で取り組めます。また広報というか発信も必要だと思います。私たちはここを拾う、他のグループはそっちを拾うと連携をとりあえれば、もっと広がるはずです」(高藤さん)
▲コープさっぽろ苫小牧地区委員が組合員活動としてInstagramで発信してくれています。
自分たちの活動で満足するのではなく、広げていくことが大事というのは、山本さんも同意見です。
「ごみに関心を持ってくれる人を増やして、そもそもごみを捨てないというところまで持っていきたい。苫小牧では郵便番号053にかけて、ゼロごみ推進を掲げているので、ごみのないまちを実現したいと思っています」
最後にピリカの朝緑さんが今回の取り組みをこう締めくくってくれました。
「ふだんは東京にいて現地の方々と接点を持つのが難しいので、今回Local Innovation Challenge HOKKAIDO 2024をきっかけに、山本浄化興業さんやコープさっぽろ苫小牧地区委員会の皆さんとつながることができたのは大変ありがたいと思っています。これを足がかりに自治体や他地域にアプローチしていきたいと思っています」
それぞれが持つリソースを組み合わせて、新しい価値の創出を目指すオープンイノベーション。小さなステップが大きなうねりを生む可能性を秘めています。
小売業、ごみ収集業、環境分野のスタートアップ。分野の違う三者の共創が、ごみ拾いの市民活動を全市、全道に広げていく一歩になるかもしれません。
(本共創事例のメンバー)
■株式会社ピリカ
■山本浄化興業株式会社
■生活協同組合コープさっぽろ
(お問い合わせ)
⇒この記事に関するお問い合わせは、コチラから
■STARTUP HOKKAIDO
■HOP (Hokkaido Open Platform)
https://app.tailorworks.com/community/hokkaido/overview
HOP(Hokkaido Open Platform)事務局【所属:NTT東日本-北海道】
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