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2026年4月28日 8:56

更新

2026年5月6日 23:57

共創マガジンvol.8 ~健康支援拠点「まちの保健室」を イオン札幌手稲駅前ショッピングセンターで実証実験! 株式会社かんごぷらす × イオン北海道株式会社~

全体公開

地域の課題や可能性に向き合い、企業や自治体、大学・研究機関が連携して新しい価値を生み出す——そんなオープンイノベーションの実例(共創事例)をシリーズでご紹介します!

健康支援拠点「まちの保健室」を

イオン札幌手稲駅前ショッピングセンターで実証実験!

株式会社かんごぷらす × イオン北海道株式会社

株式会社かんごぷらすは、看護科学で地域の健康システムを設計し、100歳になっても、健康で、自分らしく、楽しく生きられる地域社会を創ることを目的に、2023年に起業したスタートアップです。

2026年2月にはイオン北海道と共同で、イオン札幌手稲駅前ショッピングセンターにおいてイオンまるごとウエルネス拠点プロジェクトを実施いたしました(大塚製薬株式会社協力)。

どのような経緯でイオン北海道株式会社のような大手企業とつながることができたのでしょうか。

企画・運営を担当したイオン北海道株式会社の森岡顕文さんと、株式会社かんごぷらすの代表取締役・中田亜由美さんに、両社の出会いからお聞きしました。

●ショッピングセンター内に「まちの保健室」をつくる

—おふたりが知り合ったきっかけを教えていただけますか。

中田さん:私はもともと看護領域の研究者で、大学の教員時代に札幌市内の高齢者の実態調査をして、高齢者の社会的孤立の深刻さに触れ、なんとかしたいと事業化に取り組みました。

2025年にUR都市機構など複数企業の共創事業である「看護×AIオンデマンド外出支援」を軸とした地域包括ケア実証実験(札幌市協力/STARTUP HOKKAIDO)の計画段階で、ある会社の方からイオン北海道様をご紹介いただき、楽しみの外出の目的地としてイオン札幌藻岩店様にご協力をいただきました。

森岡顕文さん(当時:イオン北海道株式会社まちづくり推進部生活圏デザイングループマネージャー)と、中田亜由美さん(株式会社かんごぷらす代表取締役社長)

—出会いを仲介してくれた方がいたのですね。

中田さん:高齢者の外出サポートの実証実験で、イオン札幌藻岩店を送迎の目的地のひとつに設定したところ、「1年ぶりにイオンに行けた」と涙ぐんで喜んでくださる方がいらっしゃいました。「健康相談できる場所はどこにあったらいいか」というアンケート調査でも、イオンと回答した方が3割にのぼったんです。そうした経緯もあって、イオン北海道株式会社まちづくり推進部の栗原部長が「イオンでもプロジェクトとしてやってみたい」と、企画を進めてくださいました。

森岡さん:私は当時まちづくり推進部 生活圏デザイングループという部署のマネージャーをしており、実務を担当しました。最初は中田さんと一緒に札幌市内の店舗をいくつか回って、高齢者の多い地域、家族連れの多い地域など、店舗ごとの特性にあわせたご提案をいただきながらディスカッションを重ね、最終的にイオン札幌手稲駅前ショッピングセンターで開催することに決めました。

●目指したのは「イオンまるごとウエルネス」

—イオン札幌手稲駅前ショッピングセンターにしたのはなぜでしょう。

森岡さん:イオン札幌手稲駅前ショッピングセンターは、株式会社西友からの承継に伴い2024年12月にイオンにリニューアルしたばかり。催事場を屋内広場として改装したので、そこを活用したいと思いました。テーマは「イオンまるごとウエルネス」。イオン北海道は「北海道のヘルス&ウエルネスを支える企業になる」という経営ビジョンを掲げているので、地域の方はもちろんですが、西友から引き継いだ店舗従業員にもそうした姿勢を理解してもらえる良い機会だと考えました。店舗のすぐそばに手稲渓仁会病院があり、通院されている方や医療従事者のご利用が多いことも決め手になりました。

部署の異動で現在はディベロッパー本部SC事業部に所属する森岡さん。イオン江別店 兼 新さっぽろ店のSCマネージャーです。

中田さん:「まちの保健室」は、イオン札幌手稲駅前店は3世代で来ていただけるようなお店にしたいという森岡さんの思いがあり、高齢者に加え、子育て中のママや介護をされている方も対象にして個別相談会のスケジュールを組みました。

森岡さん:ふらっと立ち寄って気軽に相談してほしかったので、相談窓口は閉鎖的なブースではなく、オープンなレイアウトにしています。また、座って聞く健康講座だけではなく、実際に体を動かす体験型のプログラムも取り入れたいと思い、「ふまねっと」という運動の普及に取り組むNPO法人にもご協力いただきました。

—どのような方法で告知されたのですか?

森岡さん:当社のホームページのほか、iAEONというアプリのプッシュ通知、マスコミへのニュースリリース、当社とかんごぷらすさんのSNSで周知を図りました。館内にもポスターを掲示し、チラシも配架しました。

イオン札幌手稲駅前ショッピングセンターで配架されたチラシ

●無料の個別相談に5日間で119人が参加

—開催してみてお客様の反応はいかがでしたか。

森岡さん:実証実験という形で開催したので、週と曜日を変えて5日間のスケジュールを組みました。年金支給日に高齢者向けのプログラムがあれば、多くの方に立ち寄っていただけるんじゃないかとか、いろいろ考えて設定したんですが…。

中田さん:実際はATMでお金を引き出したら、お目当ての売り場にまっすぐに向かう方が多くて、来場者は思ったほど増えませんでしたね。

森岡さん:営業側の想定とかなり違うというのは、勉強になりました(笑)。

個別相談は無料で予約も不要。看護師、助産師、歯科医師などが対応しました。

—どのくらいの方が来場されたのですか?

森岡さん:5日間で264人が来場し、うち119人が個別相談を利用されました。午前と午後に1回ずつ行った健康講座や、体験型コンテンツへの参加を含めると、多い日は1日80人が立ち寄ってくださいました。

中田さん:個別相談には看護師や保健師、助産師、歯科医師が各日3人以上常駐して、ご相談に対応しました。用意した席が足りず、広場のソファで血圧を測ったり、お話をうかがったりした時間もありましたね。

希望に応じて看護師によるフレイルチェック、歯科医師による口腔チェックも実施。

—どのような相談が多かったのでしょう。

中田さん:年代別で見ると一番多かったのは70代の女性です。「膝が痛いけど、このまま放っておいていいのか」など、ご自身の体調についての悩みもありましたし、ご家族の介護についての相談も多かったです。例えば、ご家族に認知症の兆候がある場合などは、その場で一緒に病院を検索してメモをお渡ししたり、地域包括支援センターや区役所の窓口をお伝えしたりしました。

歯科医師には入れ歯の不具合、助産師には子どもの発達やワクチン接種など、相談内容はさまざまでしたが、「聞いてもらって良かった」「安心した」と言ってくださる方が多かったです。

森岡さん:健康講座の時間に合わせて来場された方、「今日は時間がないけど」と、あらためて別の日に来てくださった方もいましたね。

—健康講座はどのような内容だったのでしょう?

中田さん:助産師によるママ向けの健康講座は「赤ちゃんのためのスキンケア」、高齢者向けの講座は私が「いつまでも若々しく、元気ハツラツ!〜目指せ!ぴんぴんころり〜」と題して、フレイル予防についてご紹介しました。吹き抜けになっている広場なので、2階から見ていた方が「相談したい」と下に降りていらしたケースもありました。

大型のデジタルサイネージを活用し、約20分の健康講座を1日2回開催しました。

イオンで取り扱っている介護用品を展示。栄養補助食品などのサンプリングも実施しました。

●ショッピングセンターでの健康相談に一定のニーズ

—5日間の実証実験の結果をどのように捉えていますか。

中田さん:個別相談は119件、来場者のアンケートでは満足度97%でした。「毎月開催してほしい」「またこのような機会があれば参加したい」「疑問に思っていたことについて病院の先生に相談したほうがいいと整理できた」などの声があり、商業施設内における健康相談に一定のニーズがあることが確認できました。

森岡さん:医療や介護は自分が当事者になるまで関心を持ちづらいものですが、いまは困っていなくても、いつか必要となったとき、イオンで相談会をやってたな、介護用品もいっぱいあったな、と第一想起してくれる場所になれたらいいかな、と思っています。

中田さん:病気療養中の方が5日間のうち2回いらっしゃって、「聞いてもらってすごく心が軽くなりました」と言ってくださったのが印象的でした。「こんなこと人に相談していいんだろうか」と思うような、ちょっとした悩みを話せる場が求められている。本格的に病院や行政に相談する手前の、つなぎの場が必要だなとあらためて思いました。

株式会社かんごぷらす 代表取締役社長の中田さんは看護師で研究者。「100歳になっても健康で、楽しく、自分らしい人生があたりまえの社会を創る」をMissionに事業を展開しています。

—今後の課題や展開についてはどうお考えですか?

森岡さん:ショッピングセンターの催しは不特定多数の人と接点を持てます。そうした場の特性を生かして、情報提供や公的機関の補完ができればいいな、と感じました。

中田さん:今回は高齢者に加えて、ママ向け・介護者向けの相談会でしたけど、ビジネスパーソン向けや学生向けの保健室も検討できます。私が大学の教員していたときも、人間関係で悩んだり食生活に困っている学生の相談に応じていました。働きざかりのビジネスパーソンもハードワークで体調管理に悩んでいたり、ストレスフルな環境に苦しんでいたりするので、週末の金曜やノー残業デーの水曜の夜などに相談会があればお役に立てるかもしれません。

株式会社かんごぷらすは北海道大学と札幌市立大学からWで認定を受けた大学発スタートアップです。

●スタートアップと大手企業の協業に必要なもの

—最後にスタートアップと大手企業の協業に向けたヒントなどあれば、お聞かせ願います。

中田さん:今回イオン北海道株式会社さんとご縁があり、価値観が一致して実現したプロジェクトでした。大きな企業の場合、何かを決める際に組織の承認が必要ですし、効果も厳しく問われるなかで、今回ご一緒させていただけたことに感謝の思いしかありません。

森岡さん:新しい取り組みは、やってみないとわからない部分があるので、私は「まずはやってみよう」と、社内提案に力を入れました。いずれ収益につなげたいというのはもちろんですが、短期的な売り上げにこだわると、パートナーシップがうまくいかなかったかもしれませんね。

—健康や福祉など直接売り上げに結びつきづらい分野の催しは、やはりハードルが高いのでしょうか。

森岡さん:健康相談では涙ぐんで「お話できて良かった」と喜んでくださる方が何人もいらっしゃいましたし、意義のある取り組みだったと思っています。確かに売り上げに直結するものではないですが、イオンに対する信頼を勝ち取るという意味では価値があるはず。風当たりが強くても、とにかくまずやってみることが大事ではないでしょうか。

中田さん:弊社は『サッポロ・ヘルスケアビジネス・サポートプログラム2025』という札幌市の補助事業に採択され、今回の実証実験もその一環でしたので、手稲区役所の保健福祉課の方も連日、見に来てくださいました。

この3月には、『北洋銀行スタートアップ研究開発基金』]を受賞して、「高齢者にも使いやすいAIオンデマンド交通予約UX(ユーザーエクスペリエンス)の開発」を進めています。

私自身、研究者から出発しているので、実験まではできても、マネタイズの仕組みとなると知識不足です。STARTUP HOKKAIDOさんなどの支援を得ながら、今後も企業や自治体と組んで、看護の専門知で社会課題の解決に向けた取り組みに挑戦していきたいと思っています。

森岡さんがSCマネージャーを務めるイオン江別店にて取材しました。

(本共創事例のメンバー)

■株式会社かんごぷらす

https://www.kangoplus.co.jp/

■イオン北海道株式会社

https://www.aeon-hokkaido.jp/

(お問い合わせ)

■STARTUP HOKKAIDO実行委員会

https://startuphokkaido.com/

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