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2026年2月13日 12:00

【視察レポート】【SFTアクション+】 CHEZAが実践するルワンダにおける陸上競技の開発 ―指導者育成を軸とした日本との連携

全体公開

本稿では、令和7年度SFTコンソーシアム会員等事業支援プログラム(SFTアクション+(プラス))を活用して実施された、合同会社CHEZAによるルワンダにおける陸上競技指導者育成・タレント発掘事業について、2025年12月に行われた日本国内研修(本邦研修)の視察内容を踏まえ、紹介する。


CHEZAの取組を軸に、日本とルワンダの双方にどのような学びや変化が生まれているのかを整理するとともに、近年共有されている人材育成や共創を重視する国際的な議論とも照らし合わせながら、本事業の特徴を考えていく。

▶ SFTコンソーシアム会員等事業支援プログラム(SFTアクション+)とは?

SFTアクション+は、SFTC正会員が国内外で取り組む「SFTアクション(スポーツを通じた国際交流・協力活動)」を推進するにあたり、課題解決の一助となることを目的として、旅費(航空賃・宿泊費)ならびに諸謝金を支援するプログラムである。2024年度に開始された。

昨年度は13団体、今年度は11団体が採択され、世界各国でスポーツを通じた国際貢献や社会課題の解決に取り組んでいる。

▽詳細はこちら:
https://www.sport4tomorrow.jpnsport.go.jp/jp/news/news-release/r7_sftactionplas_2/

1. 本プロジェクトの概要

合同会社CHEZAは、アフリカを中心に、スポーツと教育を軸とした人材育成や社会課題の解決に取り組む団体である。スポーツ分野では、子ども向けの「英語×スポーツ教室(GLORTS ACADEMY)」の運営や、大学と連携した運動能力測定プログラムの開発・実施など、競技指導と教育を組み合わせた取組を国内外で展開してきた。

また、国際協力や人材育成に関する研修・セミナーの企画運営、現地調査や研究支援などにも取り組んでおり、こうした分野横断的な実践の蓄積が、本事業の設計にも活かされている。

今回取り上げるプロジェクトは、ルワンダにおける陸上競技を軸に、指導者の育成とユース世代のタレント発掘・育成を目的として実施されたものである。ルワンダ人の陸上コーチを招聘した日本国内での研修と、ルワンダ現地での実装を往復させる循環型の設計により、日本で得た知見を現地の実情に即して再構成し、継続的な人材育成の仕組みとして定着させる点が特徴である。

▽合同会社CHEZAについてはこちら

https://www.cheza.co.jp/

▽本プロジェクトについてはこちら

https://www.cheza.co.jp/news047/

2.  TICAD9が強調した「人材育成」と「共創」という考え方

本プロジェクトの背景理解の参考として、ここでは第9回アフリカ開発会議(以下、TICAD9)で示された人材育成や共創に関する考え方について整理する。

2025年8月に横浜で開催されたTICAD9では、日本とアフリカ諸国が「対等なパートナー」として、持続的な成長と社会課題の解決に取り組む姿勢が明確に打ち出された。特に、人材育成を中核とした協力、民間セクターや自治体を含む多様な主体の参画、そして一方的な支援ではなく、双方が価値を創出する共創型のアプローチが強調された。

また、「援助から投資へ」という言葉に象徴されるように、短期的な成果を求める支援ではなく、現地の人材や制度に投資し、長期的な発展につなげていく視点が共有された。

若者や女性への投資、教育・人材育成の重要性は、ほぼすべての議題に横断的に位置づけられており、スポーツ分野もまた、そうした潮流と結びつき得る領域として捉え直すことができる。

3.日本とルワンダの関係性を土台とした連携の背景

本プロジェクトは、日本とルワンダの間でこれまでに積み重ねられてきた関係性を土台として設計されている。兵庫県神戸市(以下、神戸市)とルワンダ・キガリ市の都市間パートナーシップに加え、神戸市を拠点に活動するCHEZAと、キガリを拠点とするSports Genix International(SGI)との間には、プロジェクト以前から継続的な協働関係が築かれてきた。

こうした自治体・民間双方での継続的関係の積み重ねが、本事業における日本とルワンダの往復型の取組を可能にしている。

 

4.競技力向上と指導者育成を軸とした「スポーツの開発」

本プロジェクトは、ルワンダにおける陸上競技の普及・強化を目的とした、いわゆる「スポーツの開発(Development of Sport)」の取組である。事業の中心に位置づけられているのは競技環境そのものの整備ではなく、現地で継続的に選手を育てていくための指導者育成とタレント発掘という仕組みである。

プロジェクト内では、日本国内での本邦研修と、ルワンダ現地での実装プログラムを組み合わせて実施されている。特徴的なのは、研修と実装を一方向の流れとせず、日本とルワンダを往復する循環型の構造として設計されている点である。

2025年12月に実施された本邦研修では、神戸市および滋賀県草津市を中心に研修が行われた。

神戸市では、CHEZAが実践してきた運動能力測定プログラムにおける計測精度の確保や解析手法など実践的なトレーニングを中心に研修が行われた。運動能力測定プログラムは、筑波大学の「つくば国際スポーツアカデミー(TIAS)」と協働開発したプログラムで、これまでに国内およびアフリカ8カ国でも測定実績がある。

加えて、ユースだけでなく、より低年齢へのスポーツ指導の実践例として、CHEZAが運営する英語×スポーツ教室(GLORTS ACADEMY)の視察、スポーツ栄養学ワークショップや、神戸市総合運動公園などの公共スポーツ施設の視察も行われた。

[写真①:タレント発掘・育成事業のレクチャーならびに計測の実践]

[写真②:GLORTS ACADEMYおよび神戸市総合運動公園の視察]

一方、滋賀県草津市では、立命館大学びわこ・くさつキャンパスを拠点に、スポーツ健康科学の知見を活用した研修が実施された。研究設備や大学スポーツの指導現場を通じて、競技力向上を支える科学的アプローチと、教育・研究が結びついたスポーツ支援のあり方が示された。

研修内では、研修生が学生の測定記録を取るなど、実習の一部に関与する場面もあり、現地で実施予定のタレント発掘テストの具体像を日本の研修段階で確認する機会となっていた。

また、本プロジェクトの学術的支援に関わる有識者として、スポーツと開発や開発途上国における体育授業に関する研究を行っている立命館大学スポーツ健康科学部の山平芳美准教授による講義や、研究室の学生とのディスカッションも行われた。

これらの場では、競技力向上のための科学的支援にとどまらず、スポーツが国際協力や人材育成とどのように接続し得るかといった観点が共有された。ルワンダ側の状況を踏まえつつ、日本側にとっても「自国のスポーツ資源や知見を、異なる文脈の中でどう活かすか」を考える機会となり、競技開発と国際協力の交点を意識した議論が行われていた。

[写真③:立命館大学での本邦研修の様子]

 

さらに、本邦研修の一環として、兵庫県立明石北高校陸上競技部への視察およびディスカッションも行われた。明石北高校は、海外選手の受け入れが初めてであったが、指導者側は「ルワンダでも実践可能か」という視点を強く意識し、特別な器具に依存しないトレーニングメニューを工夫して提示していた。生徒たちも事前にルワンダについて学習した上で交流に臨んでおり、競技を通じた国際交流への高い関心と前向きな姿勢がうかがえた。

生徒からは国際交流への関心を示す声が聞かれ、指導者からも教育的価値を評価する声があがっていた。高校教育の現場が国際協力の文脈と接続するこの経験は、日本側にとっても教育的価値の高い学びの機会となっている。

[写真④:明石北高校での本邦研修の様子]

 

5.日本とルワンダ双方に生まれた学び

本プロジェクトの本邦研修では、現地指導者が日本の事例を学ぶ場であると同時に、日本側にとっても、自らの知見を異なる社会文脈にどう適用するかを問い直す機会となっていた。

その基盤の一つとなっているのが、筑波大学の「つくば国際スポーツアカデミー(TIAS)」をはじめとする、日本におけるスポーツ×国際協力分野の人材育成の蓄積である。

CHEZAは長年TIASと連携しており、CHEZAのメンバーにTIAS関係者がいることはもちろん、ルワンダの現地パートナーであるSports Genix International(SGI)の創業者・CEOはTIASの修了生である。また、CHEZAのメンバーには、JICA海外協力隊としてルワンダを含むアフリカ諸国で陸上コーチとして活動した経験を持つ人材をはじめ、アフリカを含む国際協力の現場経験を持つ人材が複数参画しており、現地パートナーや公的機関との連携を円滑に進めるうえでの基盤となっている。

こうした人材は、日本側の知見と現地の実情の双方を理解しており、研修内容をそのまま移植するのではなく、現地の制度、文化、資源条件に応じて内容を翻訳・再構成する役割を果たしている。日本とルワンダが「ともに学ぶ」関係としてプログラムが成立している背景には、こうした人材の存在が大きく寄与している。

このような体制から生まれる双方での学びは多岐にわたるが、その一例として、スポーツ栄養学の分野における取組が挙げられる。

本邦研修では、甲南女子大学健康栄養学部の学生と協働した「スポーツ栄養学ワークショップ」が実施された。ワークショップでは、理想的な栄養摂取の考え方を一方的に伝えるのではなく、ルワンダの実際の食生活を題材に栄養評価を行い、現地で調達可能な食材を前提とした食事内容やスポーツドリンクの工夫について、実践形式で検討が行われた。学生にとっても、自らが学んでいる知識を異なる文化・生活条件の中でどう応用できるのかを考える貴重な学習機会となり、大学教育と国際協力が相互に価値を高め合う場となった。

研修内で紹介されたスポーツドリンクのレシピは、現地で調達可能な4種類のフルーツを用いて、実際に調理・試飲を行った。現地コーチらが熱心にレシピのメモを取り、「実践しやすい水分補給の手法を学べてありがたい」とコメントしていたことに加え、結果を伝え聞いた学生からも「現地で安価に調達できる食材を使用する意義や、味の好みが知れたことは今後に活かせる」と両者が学びを得る共創型アプローチの特徴が表れた取組であった。

[写真⑤:甲南女子大学によるスポーツ栄養学ワークショップ(左)および現地での実践(右)の様子]

 

6.人材と関係性に広がるインパクト

本プロジェクトのインパクトは、直接的な参加者数にとどまらず、育成された指導者が学校やクラブで活動を続けることで、より多くのユース世代に知識や経験が波及していくことが期待されている。また、運動能力測定やデータの蓄積は、今後の人材育成の基盤としても活用可能である。

実際に、2026年1月にルワンダで実施された現地プログラムでは、ユースアスリートを対象とした運動能力測定やトレーニングが行われるとともに、指導者向けには理論と実践を組み合わせたワークショップが実施された。

これらの内容は、日本での本邦研修を通じて具体化された指導計画や測定手法をもとに構成されており、日本で研修を受けた指導者が帰国後に講師として関与することで、学んだ内容を現地に還元する形となった。

日本側においても、大学や自治体がスポーツを通じた国際協力に関与することで、教育・研究・地域連携の新たな可能性が生まれている。スポーツを媒介とした人的ネットワークの形成は、長期的な関係構築という観点から重要な意味を持つ。

[写真⑥:ルワンダでの現地プログラムの様子]

 

7.マルチステークホルダーによる実装体制と連携の広がり

最後に、本プロジェクトの体制について整理する。

本プロジェクトは、CHEZAが主体となり、自治体、大学、高校、国際協力機関など、複数のステークホルダーと連携して進められた。各主体は、それぞれの立場や強みを活かした形で関与しており、CHEZAは全体の企画・調整を担う実行主体として、これらのリソースを編み合わせている。

日本側では神戸市をはじめとする自治体の国際連携の文脈や、JICA関西、大学、高校といった地域資源が活用され、本邦研修が実施された。

例えば、立命館大学がスポーツ科学分野を、甲南女子大学がスポーツ栄養分野を担うなど、分野ごとに専門性が活かされている。特にスポーツ栄養学の視点は、競技力向上だけでなく、ユース世代の健康や女性アスリートの支援にもつながる要素である。

ルワンダでは、ルワンダ・スポーツ省(MINISPO)、ルワンダ陸上競技連盟、Sports Genix International(SGI)が主要なパートナーとして参画し、また、JICAルワンダ事務所や現地の協力隊員も関わり、参加者の招集やプログラム運営を担っている。現地組織が主体的に関与する体制は、その先の継続や発展を見据えた基盤となっており、既にMINISPOから今後の連携に向けた提案が挙がっている。

本プロジェクトは、日本国内およびルワンダ現地のメディアでも取り上げられるなど、競技力向上を軸とした取組として注目を集めた。CHEZAが主体となり、多様なリソースを編み合わせながら進めてきた本事例は、スポーツを通じた国際交流・協力の実践として、今後の展開や横展開に向けた示唆を含んでいる。

今回のプロジェクトを通して、スポーツを軸にした人材育成は、指導者による継続的な実践と、多様な主体の連携によって広がっていくことが確認された。本プロジェクトは、こうした取組を土台として、今後も現地に根ざした人材育成の仕組みが育まれていくことが期待される。

 

▽本プロジェクトに関する発信について:

〇神戸新聞

http://www.kobe-np.co.jp/news/paper/regional/202512/0019808647.shtml

〇IGIHE(ルワンダ新聞社・現地語)

https://mobile.igihe.com/imikino/football/article/abatoza-32-n-abana-100-bahawe-ubumenyi-ku-bwo-kugabanya-impano-zidindira-muri

 

8.関係者からのコメント

「今回のプロジェクトを通して、ユース選手の育成メソッドやスポーツタレントの発掘・育成事業の先端事例について多くを学ぶことができ、本邦研修からルワンダでのワークショップまで、とても充実したプログラムでした。プログラムの実施に尽力いただいたCHEZAをはじめ、Sport for Tomorrow、事業に後援いただいたJICA、神戸市、そのほか受け入れていただいた立命館大学、明石北高校など、すべての関係者に感謝を伝えたいと思います。また、トレーニングプログラムは実践的な内容が多く、学んだ多くのことをルワンダのユース世代へのトレーニングに活かせると考えています。実際にルワンダでのワークショップでは、私が指導する選手たちに、日本で学んだトレーニングを指導しました。選手たちからは、トレーニング前の準備の重要性や、部位を変えながら行うトレーニングメニューなど、新しい視点が得られたと話していました。また、女子選手を指導する上での体調管理の重要性や、練習中・試合前後の食事や水分補給など、幅広く学べたこともとてもありがたく、今後ルワンダのコーチたちとも共有していきたいと思います。さらに、私自身もISONGA Project(ルワンダ国スポーツ省が実施するタレント発掘事業)のコーチであるため、今後このプロジェクトでタレント発掘など行う場合は、ぜひ貢献したいと考えています。ルワンダでは、ユース選手だけでなく指導者のトレーニングの機会が限られており、このプロジェクトはとても良いプログラムだったと感じているので、今後も継続して実施されることを期待しています。」

― Bregeya Aimable 氏(陸上競技コーチ、本邦研修・現地ワークショップに参加)

「今回のプロジェクトは、ルワンダの陸上競技を対象に、ユース選手の育成環境向上を目的に、指導者育成やタレント発掘・育成に取り組んできました。プロジェクトの実施にあたり、新たに多くの方々とつながることができ、関係者の輪が広がっていったことも、今後の継続実施に向けた大きな成果であったと思います。Sport for Tomorrowの支援を受けたプロジェクトであったからこそ、早期に信頼が得られ、関係構築につながったと感じています。実際に事業を進める中で、「SFTアクション+」というプログラムの強みを実感しました。中でも、立命館大学スポーツ健康科学部、陸上競技部との連携は、本プロジェクトのクオリティを引き上げる大きな要因であったと思います。今後の協働についても相談をさせていただいており、今回を契機に、引き続き協力体制の下でプロジェクトを推進できればと考えています。

また明石北高校陸上競技部への視察を受けて、Aimable氏の指導クラブのユース選手からビデオメッセージを受け、選手間で相互交流が起きたことは、当初想定していなかった嬉しい出来事でした。明石北高校の選手らからは、「次回はぜひルワンダのユース選手と一緒に走りたい」との声も挙がるなど、普段取り組んでいる「陸上競技」を通じ、ルワンダを少しでも身近に感じてもらえたのであれば幸いです。

現地ワークショップでは、当初想定を超える人数の子どもたち・コーチらの参加があり、現地の限られたチャンスを積極的に吸収しようとする強い熱量を感じられたことも大きな励みとなりました。連日参加した子どもたちからは、他クラブから来た子どもたちと競いながら参加する楽しさや全プログラムを終えた達成感を聞くことができ、運営に携わったコーチらと共に今回のプログラムを発展的に継続していく意義も共有できたのではないかと思います。また後日、ルワンダ国スポーツ省(MINISPO)から、MINISPOが実施するタレント発掘・育成事業と本プロジェクトのコラボレーションの提案を受けるなど、現地側から今後の展開に向けた提案が寄せられている点も、大変ありがたい動きです。

改めてSport for Tomorrowをはじめご支援いただいた全ての方々に感謝申し上げるとともに、引き続き事業の発展に向けてご支援賜れれば幸いです。」

― 半井 真明 氏(合同会社CHEZA・共同代表)

 

9.参考資料

本記事は以下の資料を参照しています。

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