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2021年10月31日 12:00

地域マーケティングトレース Vol.01|スタートアップとともに走るちいさなまち、奈良県三宅町

全体公開



1. はじめに 〜なぜ三宅町を選んだのか〜


 近年、官民連携の取組を積極的に行い、地域内の課題解決に取り組む自治体が見られます。


日本各地の自治体の取組を調べていく中で、官民連携の中でも

特にスタートアップ企業との連携を行っている自治体があるという情報を見かけました。


そうして出会ったのが奈良県で一番小さな町、三宅町です。



2. 三宅町とは 〜奈良県で一番ちいさな、グローブ生産のまち〜


a) 基礎データ



 奈良県で一番小さな町三宅町は、全国でも2番目に面積の小さい町です。


 また、地場産業である革製品製造業では、特に野球用グローブやスパイクなどの

スポーツ用品の生産が盛んで、2021年は野球用グローブ生産100周年の節目の年。



b) 理念・ビジョン



 これは三宅町の総合計画の中で、三宅町の将来像として設定されている言葉です。


「町花『あざさ』は、子どもからお年寄りまで幅広く住民に親しまれ、本町を代表するもののひとつです。


そして、福祉・子育て環境などが充実していることや

忍性菩薩の福祉の精神が息づいている本町の特長を

「慈愛」というひとことに内包し、みんなが手を取り合い、

あたたかなつながりを築いていくことが輝く未来につながるものと考えます」


(三宅町総合計画 第Ⅱ部第2章めざすべき将来像 より)


3. 自治体の取組


− 官民連携 −


 三宅町では冒頭述べたように積極的な官民連携の取組が見られるため、

よく記事にも取り上げられていますが、

ここで一度、最近締結された協定を以下にまとめてみようと思います。


特にこの1、2年はやはりスタートアップとの

連携が目立つことが特徴ではないでしょうか。


  • 奈良県立大学(H30.5〜):地域活性化に関する幅広い分野で協力
  • 官民連携事業研究所(R1.7〜):官民連携事例DBの実証実験
  • 江崎グリコ株式会社(R1.8〜):子育て家庭支援事業「三宅町Co育てPROJECT」
  • BABYJOB株式会社・NECQA(R2.5〜):子育て連携協定「手ぶら登園サービス」
  • 株式会社AsMama(R2.9〜):ICTを活用した子育て共助(シェア)コミュニティ形成支援
  • 株式会社Another works(R2.10〜):複業人材登用「奈良県三宅町複業プロジェクト」
  • 株式会社PREVENT(R2.11〜):生活習慣病のリスクを見える化し、今後の健康促進施策に活かす
  • 株式会社WHERE(R3.7〜):産学官民連携による地域経済の活性化


− スタートアップヴィレッジ −


 大野平野中央プロジェクトとして、令和2年10月より、

奈良県と磯城郡3町(三宅町、川西町、田原本町)の間で協議を進めてきたもの。

地域の特性に応じてテーマを設定したまちづくりを進めることに合意し、

三宅町は「スタートアップヴィレッジ(産業の活性化)」をテーマとして設定しました(令和3年5月)。



4. 自治体の独自性


  ここまで三宅町の取組を様々まとめてきたところでありますが、

一度個々の施策から視点を引き、三宅町の独自性を考えてみます。



(画像参照:https://www.town.miyake.lg.jp/


 三宅町の基礎データや取組から見ても、やはり三宅町の独自性は、

スタートアップ企業をうまく取り込んだ施策が多いこと、

町自体が非常にコンパクトであることではないでしょうか。


そういった思いから、上図のような4象限の中に三宅町を位置付けてみました。



5. 目立った施策とその要素分解 〜スタートアップヴィレッジの要素分解〜


 ここでは、マーケティングフレームワークの1つである「4P分析」に倣って、三宅町の取組を分析しました。

一般的に4P分析は、Product、Price、Place、Promotionの項目をもとに分析するフレームワークです。

Product→実施施策、Place→提供先、Promotion→PR方法、と定め、

項目の1つである"Price"については、今回の自治体のマーケティングトレースでは割愛しました。

 取り上げたのは、先述した「スタートアップヴィレッジ」です。



★Product:スタートアップヴィレッジ

大野平野中央プロジェクトにおいて、

三宅町は「スタートアップヴィレッジ(産業の活性化)」をテーマとして掲げ、

「県立大学工学系新学部」を核として、産官学の交流環境を整備し、

「スタートアップ」を地域でつくり、育てるまちづくりを行うことを目指す。


★Place:三宅町住民、起業家、民間企業

大学誘致を含め、起業家を三宅町に集め、いずれは起業家が生まれる面白い町にすることを目指す。

さらには、住民のための事業やサービスが生まれてくることや、

企業活動による税収増で住民福祉や防災力に投資できることなどから、住民にも還元されていく。

民間企業のとの連携も視野に。


(参考:note 奈良県三宅町複業プロジェクト


★Promotion:自治体HP、自治体note

自治体のHP上でリリースするだけでなく、

奈良県三宅町複業プロジェクトのために作られたnoteで、

森田町長自らのスタートアップヴィレッジ構想への思いを述べる

インタビュー記事をアップする等、積極的に情報発信を行っている。



6. 最近の変化や面白い取組


① グローブ生産100周年

 

1921年に製造が始まった三宅町のグローブ。


2021年は三宅町のグローブ・ミット生産100年の年にあたり、

100周年記念事業である「KAIMAKU」が開催されています。


 施設は三宅町役場や後述する複合型施設MiiMoを使用しながら、

アサダスポーツ、吉川清商店、crafter mind、大和グラブ工房、株式会社LINKS、

ゼンコーインダストリーといったグローブ製造企業がメンバーとして参加しています。


これまでのイベントとしては、メンバーの企業のもとでプレオープンファクトリーが開催されており、

7月25日(日)には三宅町交流まちづくりセンターMiiMoにて、

オープニングイベントが開催され、森田町長も登壇しました。


公式サイト、Twitter、Instagram、You Tubeで情報発信がされています。


(参照:https://www.town.miyake.lg.jp/glove100th/index.html

https://www.town.miyake.lg.jp/glove100th/site02/IMG_20200715_155110_BEAUTY2.jpg)


② MiiMoのプレオープン

 2021年12月のグランドオープンに先駆け、

三宅町交流まちづくりセンターMiiMoが7月にプレオープンしました。

 

本複合施設のグランドコンセプトは


子どもたちが、まちのみんなが、もっと三宅を好きになるために。

三宅にあるものを活かし、三宅になかった新たな魅力を生み、三宅の未来を育む。」


公民館、図書室、学童保育、子育て支援施設など

複数の施設の機能を兼ね合わせた複合施設となっています。


 

(参照:https://kaimaku-glove.jp/

https://kaimaku-glove.jp/images/index/facility_miimo.jpg



7. 最後に


 ここまで三宅町の取組についてまとめてきましたが、三宅町の取組を通してみてみると、


◎町長自らが強い思いを持って、町民や連携事業者を巻き込みながら積極的に働きかける構図


◎スタートアップとの連携を積極的に行い、先進的な取組を仕掛けていく姿勢


が見えてくるかと思います。


6章までまとめてきたように、三宅町では三宅町ならではの取組が積極的に進められています。

様々な自治体の取組を見る際に、ここで紹介した視点も参考にしていただければ幸いです。


【参考文献】


AsMama「AsMamaが奈良県三宅町と協定締結 ~ICTを活用した子育て共助(シェア)コミュニティ形成支援を開始~」

https://asmama.jp/%e5%a5%88%e8%89%af%e7%9c%8c%e4%b8%89%e5%ae%85%e7%94%ba%e3%81%a8%e5%8d%94%e5%ae%9a%e7%b7%a0%e7%b5%90-%ef%bd%9eict%e3%82%92%e6%b4%bb%e7%94%a8%e3%81%97%e3%81%9f%e5%ad%90%e8%82%b2%e3%81%a6%e5%85%b1/


KAIMAKU GLOVE TOWN MIYAKE PROJECT

https://kaimaku-glove.jp/ (2021年9月27日閲覧)


note 奈良県三宅町複業プロジェクト 【奈良県三宅町町長の声をレポート#2】 夢が、日本で一番、叶えられるまちへ。住民・民間・行政がそれぞれの役割を果たして進めるまちづくり。

https://note.com/miyake_fukugyo


note 奈良県三宅町複業プロジェクト 【奈良県三宅町町長の声をレポート#6】三宅はスタートアップヴィレッジへ。人や企業が主体となり、行政が夢をサポートをするまちづくり。https://note.com/miyake_fukugyo/n/nb1d991ab9050


PRTIMES「官民連携事業研究所、奈良県三宅町と連携協定を締結。日本全国の公務員が使いやすい官民連携事例データベース作成へ」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000042265.html


PRTIMES「三宅町とPREVENTが健康推進に向け連携協定締結」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000036875.html


PRTIMES「奈良県 三宅町・手ぶら登園・NECQAが「子育て連携協定」を締結。全国初!公立保育園での手ぶら登園の導入で、三宅町の子育て支援と感染症対策を強化。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000038762.html


PRTIMES「産学官民連携による地域経済の活性化に向け、奈良県三宅町と包括連携を締結

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000023669.html


新公民連携最前線 「『熱意ある民間と組む』――小さな自治体の公民連携戦略」

https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/433746/051200060/?ST=ppp-print


三宅町総合計画 

https://www.town.miyake.lg.jp/assets/1.%20%E4%B8%89%E5%AE%85%E7%94%BA%E7%B7%8F%E5%90%88%E8%A8%88%E7%94%BB_1.pdf


三宅町交流まちづくりセンターMiiMo 

https://note.com/miyake_fukugyo/n/n35596a8ee978


三宅町HP「大和平野中央プロジェクトの推進に関する協定締結について」

https://www.town.miyake.lg.jp/chosei/sesaku/post_825.html (2021年9月22日閲覧)


三宅町HP「複合施設ってどんな施設?」

https://www.town.miyake.lg.jp/chosei/miimo/post_481.html


三宅町HP「三宅町の地場産業」

https://www.town.miyake.lg.jp/nyusatsu/sangyo/post_210.html


三宅町HP「奈良県立大学と包括的連携協定締結」

https://www.town.miyake.lg.jp/chosei/press/post_256.html


三宅町HP「三宅町と江崎グリコ協働事業『三宅町Co育てPROJECT』はじまります!」

https://www.town.miyake.lg.jp/chosei/press/post_456.html


三宅町HP「複業人材登用によるまちづくり包括連携協定を締結しました」

https://www.town.miyake.lg.jp/chosei/press/post_695.html

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